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 自民党総裁選がきのう告示され、過去最多となる9人が立候補を届け出た。派閥の裏金事件への責任を取る形で岸田文雄首相は退陣を表明した。政治資金の透明化や派閥支配からの脱却などの党改革をどう進め、失った国民の信頼を取り戻せるかが最大の焦点となる。

 加えて、物価高対策を含む経済政策、人口減少と地方活性化策など暮らしを守る具体策は待ったなしだ。早期の衆院解散が想定される中、国のかたちを示す外交・安全保障や原発・エネルギー、憲法改正への姿勢も明確にしなければならない。

 派閥解消の流れを受け、まれに見る混戦が予想される。27日の投開票まで15日間という過去最長の選挙期間を生かし、各候補は政策論争に徹してほしい。

 立候補したのは高市早苗経済安全保障担当相、小林鷹之前経済安保相、林芳正官房長官、小泉進次郎元環境相、上川陽子外相、加藤勝信元官房長官、河野太郎デジタル相、石破茂元幹事長、茂木敏充幹事長。

 年代は40代から70代まで幅広く、初挑戦が6人を占める。女性は2021年前回選と同じ2人にとどまった。派閥との距離感や世代交代の訴えには温度差がある。選択的夫婦別姓制度を巡る見解も分かれている。自民が多様な価値観を認め合う政党へと変革できるかも、論戦から透けて見えるだろう。

 先の国会で改正政治資金規正法が成立した。だが、使途公開が不要の政策活動費を温存するなど抜け道が残る。裏金事件では自ら決めたルールを守らない政治家と、身内に甘い党の姿勢が政治不信を高めたことを忘れてはならない。積み残した課題に本気で取り組むことが信頼回復の第一歩となる。

 岸田首相は「新しい資本主義」を掲げたが、具体策は見えないままだった。経済政策の再構築が必要となる。社会保障費や防衛費の増大に伴う財源確保策や財政再建策をどう考えるか。国民負担の在り方も正面から語るべきだ。

 総裁選の論戦の行方は、次期衆院選の公約につながる。同時期に実施されている野党・立憲民主党の代表選と併せ、日本の将来像をどう描き、誰に託すかを見極める機会にしたい。