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 関西国際空港が、1994年9月の開港から30年を迎えた。

 大阪(伊丹)空港の騒音問題を解消するため、国が世界で初めて人工島に建設した海上空港だが、当初は巨額の工費負担が問題視され、発着数も想定に届かない状態が続いた。

 2006年開港の神戸空港を巡っては神戸市や兵庫県、大阪府・市など関係自治体間に国際線就航を巡る摩擦が生じた。関空の候補地に神戸沖が有力視されながら、地元の反対でついえた経緯が背景にあった。

 今や隔世の感がある。民間企業による神戸、伊丹との一括運営が18年に実現し、3空港の最適運用を考えられるようになった。神戸には30年前後に国際定期便が就航する。

 都市圏に三つの空港を擁するのは関西の強みである。連携をさらに進化させて強みを磨き、日本全体の活性化にもつなげたい。

 関空の旅客数は12年から伸び始めた。増え続ける訪日客や格安航空会社(LCC)の普及を追い風に、23年は約2589万人と開港直後から約5割増えた。大阪・関西万博開幕を見据え25年には飛行ルートを見直し、発着枠を3割増やす計画だ。

 都市部とのアクセス拡充が急務となり、大阪市の都心部を南北に貫きJR大阪、新大阪駅と直結する「なにわ筋線」の工事も進む。開業予定は31年と先だが、大阪駅北側では先取りする形で再開発地域「うめきた2期」の一部が街開きを迎えた。関空の好調は、大阪の都市インフラ整備にも好影響をもたらしている。

 自治体や経済界には万博に加え、カジノを含む統合型リゾート施設「大阪IR」の30年開業予定も織り込み、訪日客を増やそうとする声が上がる。ただ関空は成田に次ぐ国際ハブ(拠点)空港を期待されながら国内線の路線が少なく乗り継ぎが不便だ。好調な国際線のメリットを全国に波及させる施策が欠かせない。

 訪日客の目的地は多様化し、最近では観光地として知られていない地域の人気が急上昇している。関西3空港が国内路線網を拡充し訪日客の需要にきめ細かく応えられれば、全国各地の観光客増加にも寄与するだろう。連携して海外にアピールする発想が重要だ。

 18年、台風の高潮による浸水と連絡橋へのタンカー衝突で約8千人が一時孤立する事態となった。護岸や滑走路かさ上げなどの工事は終えたが、気候変動の影響は深刻さを増し、不断の対策を講じる必要がある。

 大規模災害の発生時、空港は人命救助や物資輸送の重要拠点となる。被災して機能が停止すれば影響は広範囲に及ぶ。そうした事態を招かないよう、災害対策でも3空港の連携を深めてもらいたい。