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 米国のテレビ界で最高の栄誉とされる第76回エミー賞で、日本の戦国時代を舞台にした米配信ドラマ「SHOGUN 将軍」が、連続ドラマ部門の作品賞を受賞した。出演した真田広之さんが主演男優賞、アンナ・サワイさんが主演女優賞に輝くなど、SHOGUNは単一シーズンで歴代最多の計18冠を手にした。

 エミー賞で日本人俳優が主要部門の賞を受けるのは初めてである。2人の快挙をたたえたい。

 SHOGUNはジェームズ・クラベルさんのベストセラー小説を原作にした。「関ケ原の戦い」前夜を舞台に、徳川家康をモデルにした武将吉井虎永らの人間ドラマが展開し、英国人航海士の視点で武家社会の風習などが描かれる。真田さんが虎永を演じた。米ディズニーの動画配信サービスで配信されている。

 同名のドラマが1980年に制作され、虎永役の三船敏郎さんがエミー賞の主演男優賞候補となったものの受賞しなかった。真田さんは授賞式で、日本の時代劇関係者に向けて「あなた方から受け継いだ情熱と夢は海を渡り、国境を超えた」と述べた。今回の受賞は、時代劇の魅力を改めて世界に示した。

 真田さんは、深作欣二監督の映画「柳生一族の陰謀」(78年)で本格デビューし、時代劇やテレビドラマで活躍した。姫路市の書写山円教寺でもロケしたハリウッド映画「ラストサムライ」(2003年)への出演で高く評価され、米国に拠点を移して活動してきた。

 SHOGUNはカナダに作った城や村のセットで撮影されたが、京都などから時代劇の専門家が集められた。プロデューサーも兼ねた真田さんは「(専門家らの)才能をいかに最大限引き出すかが自分の仕事」と話していた。殺陣はもちろん、正座の仕方やふすまの開け閉めなどの所作までを細かく指導したという。

 また米国の制作でありながら、せりふの7割が日本語で演じられた。本物の時代劇を追求したところが視聴者の共感を得たのだろう。

 とはいえ時代劇の本場は日本である。黒澤明監督の「七人の侍」(1954年)や「用心棒」(61年)、「影武者」(80年)をはじめ、国際的な名声を得た映画は数多い。SHOGUNの日本人スタッフの一人は「もっと京都で本気の時代劇を作って、今こそ発信を」と話す。

 今年の米アカデミー賞では、山崎貴監督の「ゴジラ-1・0(マイナスワン)」がアジアの映画として初めて視覚効果賞を受賞した。日本映画はデジタル技術もハリウッドに負けていない。シナリオの質が高く、映像のスケールも大きい日本の時代劇が世界を席巻するのを待ちたい。