街ごと水に漬かり、車が流され、道路寸断で孤立した住民たちが助けを求める。家々が泥水にまみれた惨状は目を覆いたくなる。
元日の地震からの復旧途上にある石川県能登半島の被災地が、今度は記録的な豪雨に見舞われた。各地で河川氾濫や浸水、土砂崩れなどの被害をもたらし、死者や行方不明者が相次いだ。被災者の救助や支援に全力を挙げて取り組みたい。
能登地方では秋雨前線や低気圧の影響で21日朝から「線状降水帯」が発生し、気象庁は輪島市や珠洲(すず)市、能登町に大雨特別警報を出した。輪島市では22日午後までの48時間で500ミリ前後という観測史上最大の雨量を記録した。
河川氾濫が多発した背景には、地震の揺れで損傷した堤防や護岸の復旧工事が未完成だった点が考えられる。そこへ想定を超える大雨が降り被害を拡大させた。能登の地形的な特徴が影響しているとの指摘も出ている。中小河川が多く、大雨が降ると一気に水位が上昇するほか、市街地に降った雨水が川に流れ込めず、内水氾濫が起きやすいという。
地震で被災した国道の復旧工事が続いていた輪島市のトンネル付近では土砂崩れが起き、作業員らの安否が分からなくなった。土砂災害による道路寸断で孤立した集落は最大で115カ所に上った。
国や自治体は道路を覆った土や倒木を取り除く作業を急ぎ、要救助者の有無など被害状況の把握に努めてほしい。孤立が長引けば水や食料、燃料などが不足する恐れがあり、被災地以外の宿泊施設に避難させる「2次避難」も考える必要がある。
今回の豪雨では、能登地震の被災者向けに石川県などが建設を進めてきた仮設住宅が一部で床上浸水する被害を受けた。山間地が多い能登半島では用地確保が難しく、豪雨による洪水の浸水想定区域に整備せざるを得ない状況にあったという。震災の苦難から立ち直りかけたところで再び避難を強いられる被災者の心中を思うと胸が痛む。
能登地震の被災地では生活再建はなお途上で、震災前から人口減少に直面していた地域では、復興どころか復旧のめどさえ立たない苦境にある。災害関連死の認定申請も続いており、死者は直接死を含め400人を超える見通しだ。
豪雨禍という「複合災害」に見舞われた地域をどう支援していくか。復旧作業が本格化すれば、ボランティアの力が欠かせない。地震の後は県が当初「来ないで」と発信した影響もあり、現地の人手不足が指摘された。同じ轍(てつ)を踏まないよう、被災者の要望を踏まえ、官民を挙げて支援の手を尽くさねばならない。