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 連立与党の一角を占める公明党で15年ぶりに党の顔が変わる。28日に開いた党大会で山口那津男代表(72)が退任し、後任の代表に石井啓一幹事長(66)が就く人事を承認した。幹事長には西田実仁選対委員長(62)を選んだ。

 石井氏は旧建設省(現国土交通省)出身で、政調会長や国交相を歴任し早くからトップ候補と目されてきた。2022年にも代表就任が取り沙汰されたが、同年の参院選で振るわなかったため山口氏が続投した経緯がある。自民党や野党第1党の立憲民主党が新総裁、代表を選ぶ中、次期衆院総選挙をにらみ世代交代を打ち出す狙いだろう。

 裏金事件で政権に対する国民の信頼は失墜した。自民の暴走の歯止め役が公明党には期待されていることを、新執行部には改めて認識してもらいたい。

 山口氏は自公両党が下野した09年の衆院選で、太田昭宏代表の後継として就任した。12年に自公が政権に復帰した後は、安倍晋三氏ら3首相を支え、在任期間は最長となった。

 この間、安倍政権で集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈変更を容認したほか、岸田政権でも反撃能力(敵基地攻撃能力)を含む安保3文書の改定に同意した。自民党に押し切られた格好だ。

 派閥裏金事件に絡む政治資金規正法改正では、「20万円超」となっているパーティー券購入者名の公開基準額について、自民案より低い「5万円超」を実現させた。しかし不透明な政策活動費は温存され、監査する第三者機関の詳細は今後の課題となった。裏金を根絶するだけの存在感を示せたとは言い難い。

 党勢立て直しも大きな課題だ。新首相は今秋にも解散総選挙を断行するとの見方が強いが、支持母体の創価学会の高齢化で公明の集票力は低落傾向にある。党の存在意義を国民に語りかけ、理解を求めるのが石井氏の最初の課題と言える。

 複数の候補がトップを目指し争った自民、立民と異なり、公明の代表選立候補は石井氏だけだった。国際情勢が激動する中、「平和の党」としてどのような行動をとるか論戦を通じて示すのも、政権与党としての国民への責務ではなかったか。