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 沖縄県で女性に性的暴行を加え、負傷させたとして同県警が9月、不同意性交致傷の疑いで20代の米海兵隊員の男を書類送検したことが明らかになった。同県では別の米兵による性的暴行2件が6月に発覚したばかりだ。相次ぐ米兵による事件に、地元では「またか」と憤りの声が上がる。性的暴行は許し難い人権と尊厳の侵害であり、それが繰り返される事態は到底容認できない。

 6月に発覚した2件は発生が公表されず、政府や県警が県にも伝えていなかった点が大きな問題となった。米軍人の性犯罪事件は例外なく県に伝達するよう情報共有体制が見直された。今回は新たな運用の開始後、初めて県警が県に伝えた。

 しかし発生したのは6月下旬だ。男は9月の起訴まで県警に身柄を確保されていない。防犯対策を取る上でも連絡があまりに遅い。

 このほど訪米した沖縄県の玉城デニー知事は、米国務省と国防総省の日本部長と面会し「綱紀粛正と再発防止に向けた実効性、透明性ある取り組みを行ってほしい」と直接抗議した。これに対し、米側は「事件は遺憾」などと述べたという。

 ところが米軍が新設するとした県や地域住民との意見交換の場については、準備会の時期さえ定まっていない。玉城知事は「真剣に取り組んでもらいたい」と苦言を呈する。

 米国への働きかけは本来日本政府が真っ先に行うべきものだ。米軍は事件のたびに綱紀粛正を唱えてきたが効果はなく、再発防止の取り組みも不十分と言わざるを得ない。早急に具体策を取るよう、政府は米側に強い姿勢で求めねばならない。

 事件対応の厚い壁になっているのは米軍の特権的地位を定めた日米地位協定である。米兵の事件では、日本側への身柄引き渡しは原則として起訴後になる。凶悪事件では「好意的配慮」で引き渡される例があるが裁量権は米側が握る。1960年の発効後一度も改定されていない。

 自民党の新総裁になった石破茂氏は、日米地位協定について「見直しに着手する」と述べた。石破氏は防衛相などを経験し、沖縄の実情を知るはずだ。改定は難題だが、米側と粘り強く交渉してもらいたい。

 沖縄県では戦後、米兵による殺人や性的暴行などの凶悪事件が絶えない。県によると89年以後の35年間で、米軍構成員が不同意性交などで摘発された事件は全国で88件あり、41件が同県で起きていた。

 在日米軍専用施設面積の7割が沖縄県に集中する。米兵事件の半数近くが発生するのに基地の偏在が影響しているのは明らかだ。問題の根本的な解決には、米軍基地の整理縮小を着実に進めていくしかない。