神戸新聞NEXT

 日銀は今年に入り、物価や景気をコントロールするための政策金利を2度引き上げた。17年ぶりの利上げとなり、「金利のある世界」が到来している。

 金融機関にとっては、預金と融資の金利の差である「利ざや」が拡大し、収益増が期待できる。一方、今回の利上げは物価対策を主眼とし、景気にプラスをもたらすかは見通せない。資金需要が高まっているとは言えない中で融資金利を引き上げれば、経営を圧迫される融資先が続出するリスクもある。

 地域金融機関の責務は「ゼロ金利」だったこれまで以上に重くなる。そうした自覚を持って金融サービスの付加価値を高めてほしい。

 利上げは地域経済にプラスマイナス両方の影響が生じる。金融資産を多く持つ人は金利収入が増え、住宅ローンを抱える世帯は負担が増す。企業融資の金利引き上げも避けられない。

 大手銀行や兵庫県内に本店を置く一部の地銀・信金などは預金金利を引き上げた。一方で融資金利の引き上げは、規模の大きい企業向けは金融機関との交渉が進んでいるようだが、零細企業や個人事業主向けは容易ではない。経営実態や今後の事業計画などの相談に応じながら丁寧な対応を求めたい。

 1990年代後半の「金融ビッグバン」以降、金融界では自由化が進み多くの規制が取り払われた。一方で低金利時代が長く続き利ざやが縮小したために、金融機関は店舗削減などのコストカットや有価証券投資で生き残りを図った。

 規制緩和がメリットになったと多くの利用者は感じられないだろう。金利の復活で、それに見合うだけのサービスを提供できるか、金融機関に対する顧客の視線はいっそう厳しくなる。

 人口減少が引き起こすさまざまな課題の解決に、地域金融機関ができることは少なくない。地域に根付いた事業の新分野展開や後継者探し、起業家の発掘などだ。

 必要な人材を育成して、地域を衰退から持続、発展へとつなげる。地域金融機関は金利の復活で体質強化を図り、兵庫県内各地の経済が成長に向けて再加速する契機を見つけ出してもらいたい。