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 衆院が解散され、与野党は事実上の選挙戦に突入した。最大の焦点は岸田文雄前政権を退陣に追い込んだ派閥裏金事件など「政治とカネ」の問題にどう向き合うかだ。

 自民党は、裏金事件に関与した議員らの非公認や比例代表への重複立候補を認めない方針を決めた。一方で連立を組む公明党が非公認議員の一部を推薦するなど、ちぐはぐな対応が有権者を戸惑わせている。

 公約でも同じことが言える。野党各党が、政党から議員に支給され使途公開の義務がない政策活動費の廃止を掲げたのに対し、自民は「将来的な廃止も念頭に」取り組むとの記述にとどまった。公明党は廃止で野党と足並みをそろえ、与党内にも温度差がある。石破茂首相が解散前の党首討論で政策活動費を衆院選で使う可能性を認めたことも、改革への姿勢を分かりにくくした。

 これで国民の「納得と共感」が得られるだろうか。野党との論戦を通じて、政治改革の本気度を具体策で示すべきだ。

 立憲民主党、日本維新の会、共産党などは企業・団体献金の禁止も打ち出した。立民、国民民主党は政治家の責任や罰則の強化も記した。

 企業・団体献金を巡っては、リクルート事件などを受けた1994年の政治改革で、政治家個人や資金管理団体に年間50万円まで認めた上で「5年後の禁止」に合意した。企業などとの癒着で政治がゆがめられるのを防ぐためだ。代わりに導入したのが税金を原資とする政党交付金制度で、反対し受け取らない共産を除く政党に議員数などに応じて総額300億円規模が交付されている。

 だが99年の法改正でも、企業・団体献金は禁止とならず、政党支部への献金や支部から政治家の資金管理団体への資金移動も認めた。事実上、政党支部代表の議員が政治活動に使える形で今も温存されている。

 自民が政治資金問題を「信頼回復の一丁目一番地」とするならば、野党各党が主張するように企業・団体献金の廃止は避けて通れないのではないか。党内には「企業の政治活動の自由」や「資金力、組織を持つ人しか政治家を志せない」などの異論があるが、30年前の政治改革の原点は「金のかからない政治」を実現し、金権腐敗を防ぐことだったはずだ。そこに立ち返らなければ、抜本的な改革は成し遂げようもない。

 法の抜け穴を繕い、国民の信頼を取り戻す。これは争う余地がない政治の責務である。少なくとも各党が公約する政策活動費の廃止、旧文通費の使途公開などは、選挙結果にかかわらず新しい国会で早期に実現しなければならない。合意を視野に入れた各党の真摯(しんし)な論戦を求める。