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 4月13日の大阪・関西万博開幕まで1カ月と迫った。企業パビリオンのお披露目が始まり、公式ガイドブックも今月19日に発売されるなど、ここに来てようやく機運を盛り上げる仕掛けが整い始めた。

 日本国際博覧会協会は10月13日までの会期中に約2820万人の入場を見込み、うち約1割を訪日客が占めるとみる。開幕直後の4月18日には神戸空港が国際化され中国や韓国、台湾とのチャーター便が就航する。兵庫県は内外の来場客が利用する万博への玄関口の一つとなる。

 その取り込みを狙い、県内各地では地元の団体や企業などが手がける体験型観光事業「ひょうごフィールドパビリオン」(FP)が実施される。県が内容を精査して認定し、今年1月末時点で260を数えるが、今後さらに増える可能性がある。

 県や主催者は「万博が終わっても続けられる事業」を目指す。万博を契機に兵庫に足を向ける人が増え、終了後もリピーターになってくれるよう、各事業の魅力を高めるとともに情報発信も工夫したい。

 播州織の現場見学と制作体験(西脇市)、プロの仲買人が案内する漁港での競り体験(洲本市)、能舞台の鑑賞と能楽師が指導する演技体験(姫路市)…。FPは地域の歴史や風土、文化などをテーマに、SDGs(持続可能な開発目標)も意識した内容となっている。無料や通訳付きも少なくない。万博の来場者に限らず、県民も参加できる。

 近年は混雑する京都や富士山ではなく、静かで日本らしさを味わえる場所が訪日客の人気を集める。その点を踏まえれば、各地のFPに興味を持つ人も多いのではないか。

 重要なのは、数多くのFPをいかに広く周知するかだ。県は無料の冊子や専用サイトを作ったほか、内外の旅行関連イベントへの出展や万博会場内の「兵庫県ゾーン」などでも紹介する。来場者の関心を集め旅行プランに組み込んでもらうには早期のPR強化が欠かせない。

 最近は交流サイト(SNS)への投稿などにより、地元住民が意識しないような場所が観光スポットとして着目される傾向もみられる。FPに関わる人たちもSNSを効果的に活用して、多くの人に魅力を直接届けられる情報発信にチャレンジしてもらいたい。

 県は2023年からFPを順次認定し、旅行会社も交えてそれぞれの商品力を高めるための研修などを実施してきた。

 観光資源を足元に見いだすだけでなく、人を呼び込むために練り上げてきたノウハウの蓄積は貴重な財産となる。万博が終わった後も、各地域の活性化に役立ててほしい。