神戸港に米海軍の掃海艦「ウォーリア」が入港した。港を管理する神戸市は、入港する外国艦船に非核証明書の提出を求める「非核神戸方式」を採っているが、同艦は提出していない。
神戸市会が1975年3月、核搭載艦の入港拒否を全会一致で決議して50年。8カ国計22隻の外国艦船が神戸港に入ったが、米軍艦の入港は初となる。決議に基づく非核証明書を提出しなかったのは98年5月のカナダ海軍補給艦に続いて2例目だ。
証明書がなくても入港できる前例が積み重なることで、神戸方式の形骸化が進まないかが懸念される。
市などによると今月17日に米軍側から入港届が出され、24日午前、同市灘区の摩耶埠頭(ふとう)に入った。乗員の休息や補給が目的とされ、きょうの午後出港を予定している。
市は届け出の1カ月前に入港の情報を把握し、米軍側に非核証明書の提出を求め、日本の外務省とも調整してきた。日米双方から「日本の港に入る米艦船は核兵器を搭載していない」との見解が得られたとして、証明書が提出されないまま今月21日に市長名で入港を許可したという。
市は24日の市会常任委員会で「決議を尊重して必要な手続きを進め、核兵器を搭載していないと確認できた」と説明したが、市議からは「証明書を出せないのに非搭載と言い切れるのか」との指摘が出た。神戸方式の実効性が問われる事態である。
核搭載の有無を公表しない方針をとっているため50年間一度も入港しなかった米艦艇が、今回あえて立ち寄った意図もはっきりしない。
1例目のカナダ補給艦は海上自衛隊阪神基地隊(神戸市東灘区)に接岸したが、今回は公共埠頭への寄港である。艦長は会見で、寄港の目的の一つに「海自阪神基地の掃海部門との交流」を挙げた。ならば海自施設に接岸した方がスムーズだろう。
また米の政策として「米海軍の艦船や潜水艦などに核兵器は搭載しない。この艦は掃海任務に特化している」と述べた。機雷を探知、識別する掃海艦の機能上、核を積まないのが常識ならば、非核証明書を出しても問題はないのではないか。
非核神戸方式は国内外からの逆風を受けつつも、「市民に親しまれる平和な港」を掲げる議会の意志とそれを尊重する歴代市長の方針によって維持されてきた。法的拘束力はないが、丁寧に対話を重ね、理解を得る過程に地方自治の本質を見る。
地域から平和を模索する独自の仕組みを骨抜きにしないため、まず市民が神戸方式の意義を再認識する必要がある。世界が核軍拡と核廃絶の間で揺れ動く中、その在り方を改めて議論する機会としたい。