総務省は10月から、ふるさと納税で寄付した際の特典ポイントの付与を事実上禁止する。ふるさと納税を扱う仲介サイトでは駆け込み利用を当て込んだPRが過熱している。
一方でポイントがつかないと制度自体の利用が鈍るとの見方もある。寄付の理念に立ち返り、制度の在り方を再考したい。
ふるさと納税は、応援したい自治体への寄付制度として2008年に導入された。24年度のふるさと納税による寄付総額は約1兆2728億円と5年連続で過去最高を更新した。
寄付文化が定着したとは言い難い日本社会で利用が急増したのは、仲介サイトの存在が大きい。だが返礼品や仲介サイトの提供するポイントで「お得感」ばかりが強調された結果、寄付というよりネット通販のような印象を持っている利用者も少なくないだろう。
ポイント付与は仲介サイトの顧客獲得競争に利用されている上、その原資は自治体の負担との指摘もある。現状は寄付総額の半分近くが経費に使われ、サイトへの手数料は総額の13%にのぼる。
総務省は26年9月から、返礼品の調達費や仲介サイトへの手数料など募集経費について、支払い先や金額などを自治体に公表させる。ポイントなどに頼らない寄付の集め方を各自治体が考える必要がある。
返礼品は各自治体の地場産品が原則で、地域のPRにつながる場合は例外も認められる。ただ規定があいまいで、産地偽装などのトラブルも後を絶たない。総務省は26年10月から返礼品の規定も明確にする。直近1年間に自治体の広報目的で配布、販売した実績などを要件とし、販売計画などの策定も求める。地域に根付いた産品で謝意を示す趣旨に近づける狙いだ。
東日本大震災が起きた11年は、ふるさと納税の寄付総額が大きく増えた。その後の大災害時も、返礼品なしで多くの仲介サイトが被災自治体向けの寄付を募った。
生まれ育った故郷や、苦境に立つ地域に貢献したいという思いは多くの国民が持っている。その思いを形にするため、持続的な枠組みを構築するのが、国の責務である。