2030年度から小中高校で順次実施される次期学習指導要領について、中央教育審議会の特別部会が枠組みを示した。
ポイントは大きく二つ。学校現場の裁量を広げて柔軟な教育課程を可能にすることと、情報教育の強化である。多様な特性や背景を持つ児童生徒が自己肯定感を持って学びを深められるように、制度や現場の支援態勢を整える必要がある。
教育課程の柔軟化では、新たに「調整授業時間数制度」を設ける。学校の判断で、例えば週5こまの国語を4こまにして削った分を数学に充てたり、児童生徒が苦手な分野の学習に取り組んだりできるようにする。
情報教育は小学校から体系的に取り組む。デジタル端末での動画撮影やプログラミング体験を想定している。中学は技術・家庭科を分けて技術分野を「情報・技術科(仮称)」とし、生成人工知能(AI)を学ぶ。
調整授業時間数制度を活用すると、授業時間を減らす教科が出てくる。そのため、「教科書の内容を終えられるのか」と懸念する教員は少なくない。指導要領の改定のたびに教科書の内容が膨らみ、現場の負担増の要因になっているからだ。
文部科学省は制度設計にあたり、まずは共通して学ぶべき内容を精選し、教科書の分量を減らすべきではないか。教員の定員増にも踏み込んでほしい。
学校間で学習環境に格差が生じないよう、外部人材の活用などで現場を支える仕組みを国が充実させることが肝要だ。
中教審の作業部会はデジタル教科書を正式な教科書と位置付ける案を了承した。教育委員会が紙のみ、完全デジタル、紙とデジタルを組み合わせた「ハイブリッド」の3種類から選ぶ。
デジタル教科書には、個人に合わせた学びが充実するとの利点の一方、注意をそらす要因が多いといったデメリットも指摘される。子どもの発達段階に応じた効果的な活用方法を見極めねばならない。
現場の裁量拡大や情報教育の充実はいずれも重要だ。しかし、教育の質を高め、全体の底上げを図るには、教員が余裕を持って児童生徒に丁寧に向き合う時間を増やすことが何より求められる。