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 任期満了に伴う神戸市長選は、現職の久元喜造氏が4選を果たした。与野党相乗りの支援を得て、新人3人を寄せ付けなかった。3期12年の市政運営に市民が一定の評価と信任を寄せ、継続を望んだと言える。

 神戸市の人口は2011年をピークに減少を続けている。現在の148万6千人が25年後には118万5千人まで減るとの推計もある。都市の活力低下をどう防ぐかが切実な課題だ。

 今回の市長選も人口減対策とまちづくりの方向性が主要な争点となった。ただ衆院選と重なった前回、前々回と比べ、選挙戦は盛り上がりを欠いた感が否めない。市政に対する市民の関心を高める努力を重ねたか現職として省みる必要がある。

 久元氏は目指す都市像に「持続可能な成長を続ける大都市」を掲げた。都心・三宮をはじめとする都市再整備、神戸空港国際化を生かした経済振興、子育て環境の充実などの公約を着実に実行し、住みやすく活力のある神戸を築いていかねばならない。一方で批判票を投じた市民の声にも耳を傾け、対話と合意形成に努めてもらいたい。多選の弊害を防ぐことにもなる。

 神戸の人口減少は、死亡者数が出生者数を上回る自然減の拡大が主な要因だ。近年は東京や大阪への若者の流出が続いている。中央区など中心部で人口が増える一方、北区や西区など郊外では減り幅が大きく、人口の「偏在」も懸念される。

 久元市政は「切れ目のない子育て支援」を掲げ、雇用、教育、住宅など若年世代への支援拡充に努めてきた。だが他都市も同様の施策に取り組む中、子育て世代の増加という成果を短期間で手にするのは難しい。危機感を強め、従来の延長線にとどまらない発想も必要だろう。

 住民の高齢化と建物の老朽化が急激に進む周辺部への目配りも忘れてはならない。市民との協働を深化させるため、地域活動への支援を強めてほしい。

 海と山に恵まれた自然環境とさまざまな国、地域の人が共生する多様性は神戸の魅力だ。住みたい街として選ばれるよう魅力を磨き、人を呼び込む。市民の願いや問題提起に久元氏は応え、次世代に希望ある神戸をつないでいく責任がある。