高市早苗首相は6年ぶりに訪日したトランプ米大統領と初の首脳会談に臨んだ。トランプ氏と緊密な関係を築いた安倍晋三元首相の後継者をアピールし、日米同盟の「新たな黄金時代」を共につくることで合意した。
トランプ氏も高市氏を「最も偉大な首相の一人になる」と持ち上げ、会談は和やかなムードで進んだ。個人的な関係づくりでは、安倍外交の遺産を活用する戦略が奏功したと言える。
だが安倍外交の時代と比べ、第2次トランプ政権は自国第一主義と国際協調軽視の傾向を強めている。米国の変容と向き合い、自身のタカ派的信条も自制して、真の国益にかなった外交・安全保障政策を打ちだせるか。首相の手腕が問われる。
会談では日米の思惑の違いも垣間見えた。米側が主導した共同文書は、9月に妥結した5500億ドル(約84兆円)の巨額対米投資の着実な履行と、レアアース(希土類)など重要鉱物の供給・確保への協力を盛り込んだ。一方、安保分野には具体的に踏み込まなかった。
安倍氏が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」の進展に向け日米協力を訴える高市氏に対し、トランプ氏は同地域への関与には直接言及しなかった。自国の経済的利益に関心が向いているのは明らかだ。
首相は所信表明で、防衛費の増額目標を前倒しする方針を表明した。防衛力強化は首相の持論だが、米側から要求される前にその決意を示し、当面の理解を得る狙いもあった。しかしトランプ氏に響いたかは疑問だ。
トランプ政権は同盟国に国防費の増額を要求し、北大西洋条約機構(NATO)加盟国は国内総生産(GDP)比5%の目標設定で合意した。今後日本にも厳しい財政事情などお構いなしに増額を迫る可能性がある。
覇権主義的な動きを強める中国や北朝鮮の核・ミサイル開発など日本を取り巻く安保環境は厳しさを増す。日米関係の重要性は変わらないが、米側の言いなりに増額を受け入れれば、地域の緊張を高めかねない。
首相は、韓国など共通の課題を抱える近隣国や価値観を共有する欧州との関係を深め、対米偏重に陥らない自立的外交の基盤を固める必要がある。

























