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 国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)が、ブラジル北部・アマゾン地域の都市ベレンで始まった。160超の国と地域が参加し、21日までの日程で地球温暖化対策を議論する。世界各国では猛暑や豪雨、干ばつ、山火事、海面上昇などによる被害が深刻化しており、気候危機への対応は喫緊の課題だ。今年はCOP21での「パリ協定」採択から10年の節目となり、とりわけ重要な会議と位置付けられる。

 パリ協定では産業革命前からの気温上昇を2度、できれば1・5度に抑える目標を掲げる。参加国は、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出削減目標(NDC)を5年ごとに見直し、提出する義務がある。今年は提出の年に当たる。

 国連環境計画(UNEP)によると、2024年の温室効果ガス排出量は過去最多となった。世界気象機関(WMO)は24年の世界平均気温が既に1・55度上昇し、単年では初めて1・5度を超えたと報告した。UNEPはこのままでは今世紀中に最大2・8度上昇するとしている。

 パリ協定の目標達成は極めて厳しいと言わざるを得ない。しかし各国は安易に目標を投げ出すことなく、COP30で協調と結束を確認し、実効性を伴った強い対策を打ち出してほしい。地球温暖化の影響を特に受けやすい発展途上国への支援資金の具体化なども注目される。

 会議に先立つ首脳級会合で、議長国のブラジルが、約70カ国の熱帯林保護に向けた国際基金「TFFF」の創設を発表した。熱帯林は温室効果ガスを吸収し、アマゾンは「地球の肺」と呼ばれる。日本は拠出せずに森林保全への協力方法を探るという。早期の検討が求められる。

 ブラジルは、バイオ燃料や水素など「持続可能燃料」の利用拡大を訴える宣言も発表した。これは日本、イタリアと共同提案した。35年までに24年比で少なくとも4倍にすることを目指し、途上国への技術支援なども盛り込んだ。こうした取り組みを着実に広げていきたい。

 懸念されるのは、パリ協定離脱を表明したトランプ米大統領が欠席した影響だ。NDCを9月末の期限までに提出したのは日本や英国など3割にとどまり、米国の離脱で対策の機運がしぼんだとの見方がある。世界2位の温室ガス排出大国が温暖化対策の足を引っ張る責任は重い。参加国はトランプ氏の意向に左右されず、議論を深めねばならない。

 高市早苗首相も臨時国会への対応を優先し、昨年の石破茂前首相に続いて首脳級会合を欠席した。国際社会での責務を果たすべく、事務方や閣僚級の会合では、日本には積極的に議論を主導してもらいたい。