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 北海道電力泊原発3号機(泊村)の再稼働について、北海道の鈴木直道知事が同意する意向を道議会で表明した。3号機は今年7月末に原子力規制委員会の再稼働審査に合格したばかりだ。そこからわずか4カ月での知事の同意表明は、他の事例と比べて異例の早さである。

 北海道では半導体産業の集積やデータセンターの建設などが進む。鈴木知事は地域経済の現状を念頭に、再稼働の方向性を示せば投資促進や雇用拡大につながると述べた。また電気料金の引き下げや安定した電力供給が見込まれると理解を求めた。

 津波を想定した海抜19メートルの防潮堤を建設中の北海道電は「安全対策工事に総力を挙げて取り組む」と強調する。しかし事故の恐れに対する住民の不安は解消されていない。知事が幅広い民意に耳を傾け、それに基づいて判断したのか疑問が残る。

 泊原発周辺4町村の首長は既に同意を表明していた。ただ、5~30キロ圏内の緊急防護措置区域(UPZ)を含む自治体からは「安全性への住民理解が深まったと判断するのは難しい」(積丹町)、「設定されている避難経路では十分とは言えない」(ニセコ町)などの意見があった。

 また道主催の住民説明会が各地で開かれ、北海道電や国側が見解を示したものの、住民意識調査は行われていない。市民団体からは再稼働に同意しないことを求める署名も提出されていた。この状況では、議論が尽くされたとは到底言えない。

 忘れてならないのは、3号機を巡る規制委の審査が12年という長期にわたった点だ。地震や津波に対応する北海道電社内の専門人材の不足について規制委が苦言を呈するなど、安全への姿勢が厳しく問われた。こうした組織体質が抜本的に改善されているのか、懸念を抱く。

 泊原発の廃炉を求める訴訟が札幌高裁で係争中という問題もある。札幌地裁は廃炉請求を棄却する一方、安全性の基準を満たしていないとして1~3号機の運転差し止めを命じた。3号機はその後審査に合格しているが、原告は控訴審で海底の活断層などについて立証する見通しだという。再び差し止め判決が出る可能性もあり、予断を許さない。

 政府が今年改定したエネルギー基本計画では、原発を「最大限活用する」との方針を掲げた。発電量全体に占める原発の割合を、2040年度に2割程度に増やすとしている。

 11月、新潟県の花角(はなずみ)英世知事も東京電力柏崎刈羽原発の再稼働容認の意向を表明したが、これらを合わせても現状は2割にほど遠い。目標達成のため、政府が「再稼働ありき」の姿勢でエネルギー政策を進めるようなことがあってはならない。