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 自治体トップが長年にわたって部下である女性職員に言語道断の愚行を繰り返し、組織もそれを止められなかった。

 福井県の前知事、杉本達治氏がセクハラを認めて2期目の途中で辞職した問題で、県の依頼を受けた弁護士の特別調査委員が報告書を公表した。昨年4月に県の公益通報窓口に女性職員が通報し、全職員約6千人に情報提供を呼びかけていた。

 調査の結果、複数の職員へのセクハラを認定した。性的関係を求めるメッセージをLINE(ライン)や私用メールで約千通送ったほか、食事に誘った先などで体を触る行為も3件確認された。これらは杉本氏が総務省からの出向で県総務部長を務めた2007年から、同省に戻った期間を含め昨年まで約20年続いた。

 報告書は、相手が嫌がるのを面白がるかのように女性の尊厳を踏みにじる権力者の姿を伝える。メッセージの内容は卑劣で執拗(しつよう)だ。「確かにこれはセクハラだよね」との文面もあった。

 当の杉本氏は聞き取りに対して、体を触った記憶は全くないとし、「当時はセクハラの認識がなかった」と答えた。しかし特別調査委員は「信用できない」と結論付けた。ストーカー規制法や不同意わいせつの罪に抵触する可能性もあり、「責任は重大」と非難している。

 報告書の公表後、杉本氏は反省のコメントを出したものの、いまだ公の場で説明をしていない。職を辞したとはいえ、厳しく責任を問われるべきである。

 福井県庁の組織的な問題も浮き彫りになった。被害者の1人は上司に相談したが、真剣な対応は取られず、対応部署との情報共有もされなかった。あろうことか、相談した相手からさらにセクハラを受けた職員もいた。

 福井県はまず、被害により精神的なダメージを負った職員を中傷などの二次被害から守り、ケアする必要がある。ハラスメントは許されないとの意識を組織に浸透させ、再発防止に取り組まねばならない。加害者がトップであっても適切に対応する体制をつくることが重要だ。

 兵庫県では、斎藤元彦知事が自身のパワハラなどを告発する文書を報道機関に送った人物を特定しようとした。県が設けた第三者調査委員会は、公益通報者保護法に照らして県の対応を「違法」と判断した。沖縄県南城市の前市長による職員へのセクハラ問題では、本人が否定し続けて二次被害を招いた。

 首長のハラスメント防止研修はもちろん、被害の相談や告発をした人を守る仕組みが機能しているか、各自治体は点検を急いでほしい。