厚生労働省は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を活用した重症心不全とパーキンソン病患者向けの再生医療製品2種類の製造販売を条件と期限付きで承認した。いずれも早ければ今秋ごろに治療の開始が見込まれる。iPS細胞による再生医療の実用化は世界初となる。
京都大の山中伸弥教授らの研究グループがiPS細胞の作製を発表してから20年の節目に、実用化への大きな一歩を踏み出したことは感慨深い。他にも角膜疾患や脊髄損傷、頭頸部(けいぶ)と卵巣のがんなどを対象にした有力な研究が進んでいる。日本発の成果を世界中の患者に届けたい。
承認されたのは、大阪大発のベンチャー「クオリプス」が開発した虚血性心筋症患者用の心筋シート「リハート」と、住友ファーマが手がけたパーキンソン病患者用の脳内移植用細胞「アムシェプリ」だ。いずれも治験数は10症例に満たないが、疲労感や動悸(どうき)が軽減したり、運動指標が改善したりする効果が見られ、安全性にも問題がなかったという。
リハートは心臓移植しか治療法がない重症患者の新たな選択肢に、アムシェプリは症状を抑えるだけでなく病気の治療を見込める初の製品に、それぞれなる可能性がある。
現在は「仮免許」の段階で、7年以内に有効性と安全性を確認できれば「本承認」となる。薬価は高額が見込まれるが、患者が使いやすい環境を整え、効果や安全性を慎重に見極める必要がある。
iPS細胞を使った治療法は期待されながら実用化していない例も多い。京都大と武田薬品工業の連携事業は3月、10年間の期限を迎え終了した。神戸市立神戸アイセンター病院は昨年、iPS細胞から作った網膜細胞を網膜色素上皮不全症の患者に移植する治療法で「先進医療」の指定を申請したが、治療効果が明確でないとして「不適」となった。
しかし成果を得るには研究の積み重ねが欠かせない。神戸市の理化学研究所などは2014年、滲出(しんしゅつ)型加齢黄斑変性の患者にiPS細胞由来の網膜細胞を移植する世界初の臨床研究を実施した。10年の経過観察でがん化などは確認されず、長期的な安全性を示した意義は大きい。
iPS細胞を使った再生医療は、日本が優位性を持つ分野の一つだ。12年の山中教授のノーベル賞受賞を契機に、政府は10年間で1100億円を投じて研究を支援し、早期の実用化に向けた条件・期限付き承認制度を導入した。一定の成果を生みだしたことは評価できる。
政府はiPS細胞に限らず有望な研究に対する切れ目のない支援を続け、再生医療分野における日本の存在感を高めねばならない。























