厚生労働省の有識者研究会が労働基準法改正を念頭に置いてまとめた報告書が1年以上、宙に浮いている。
前回の改正は1987年にさかのぼる。法定労働時間を週48時間から40時間に短縮し、現在のフレックスタイムにつながる変形労働制を導入した。昨年1月に公表された報告書は、その後の「働き方改革」の要素に加え、働き手が十分に休養できる施策を盛り込んだ「休み方改革」とも言える内容である。
ところが、昨年10月に就任した高市早苗首相は労働時間の規制緩和検討を指示し、今年2月の施政方針演説で裁量労働制の見直しにも言及した。報告書は首相の方針と相反し、厚労省は法案化を見送った。
しかし、働き手の心身の健康を守ることは、職場の生産性向上にもつながる。休み方改革の視点を取り入れた法改正の議論が欠かせない。
報告書は14日以上の連続勤務の禁止や、終業と始業の間に一定の休息時間を設ける勤務間インターバルの導入を促した。年間の休日数や1週間の残業時間が現行法の定める水準をクリアしていたとしても、深夜勤や早朝出勤が繰り返されれば健康へのダメージは大きい。
テレワークの広がりに対応した労働時間の把握方法の検討も求めた。柔軟な働き方が可能になる一方、私生活との区切りが不明確になって長時間労働となる場合があるためだ。
目を引くのは、労使で「つながらない権利」のガイドライン策定を掲げた点である。
帰宅しても職場から電話がかかってくるのでは、心身が休まらない。LINE(ライン)などの普及で連絡の頻度が増している職場も少なくない。一方でトラブル対応で緊急連絡が必要な場合もある。「勤務時間外には連絡しない」を原則とした上で、例外を絞り込むのがガイドライン策定の目的だ。
職場とつながらないことは、社会のデジタル化が加速する中で確立すべき新たな権利と考えられる。すでにフランスでは法制化されている。
日本経済が成長軌道を描くためにも、社会全体が「休み方」の質を高めることに関心を持つ必要がある。























