特別国会が閉幕した。改正皇室典範、日本国旗損壊罪法、「副首都」構想関連法、国家情報会議設置法など高市早苗首相がこだわる「国論を二分する」法律が、多くの疑問点や残したまま巨大与党の「数の力」で次々と成立した。国民への説明と熟議が尽くされたとは言い難い。
政府と与党は批判に耳を貸さず、野党は受け皿になりきれない。その結果、多様な民意を反映できない国会、政治への不信が募る。民主主義の土台が崩れつつある事態に、強い危機感を抱かざるを得ない。
力任せに決める政治は、将来に禍根を残す。与野党の立場を超え、国会は政権の暴走に歯止めをかける責任を果たすべきだ。
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高市首相の「抜き打ち解散」と衆院選圧勝を経て2月に開会した今国会は、衆院で4分の3を占める与党の強引な対応が目立ち、冒頭から異例ずくめだった。2026年度予算案の審議入りが遅れたにもかかわらず、首相は3月中の成立に固執した。衆院は予算委員長が職権を乱発して通過させたが、野党多数の参院の抵抗で成立が4月にずれ込んだ。
後半には「中傷動画疑惑」で追及された首相が秘書の陳述書提出をもって答弁に代えようとしたのを機に野党の反発が激化し、国会審議が10日間にわたり全面停止した。
有権者は高市政権に白紙委任したわけではない。開かれた議論を通じて異なる意見を調整し、合意形成を図る。それが国会の役割だ。しかし、今回あらわになったのは、国会軽視が甚だしい首相の政権運営の稚拙さと、それにあらがえない「国権の最高機関」の形骸化である。
首相は議論避けるな
説明や議論を避ける首相の独善的な姿勢は最後まで続いた。衆参予算委員会の集中審議への出席時間は近年の首相と比べ、極端に短い。党首討論や集中審議でも野党の質疑に正面から答えなかった。その言動からは、数の力に任せて押し切ればいいとのおごりがにじむ。
連立を組む日本維新の会を重視する首相の姿勢は際立ち、自民党内からも異論が相次いだ。連立合意書に基づく「副首都」構想関連法は、維新が地盤とする大阪の指定ありきとの批判が噴出した。維新は「大阪都構想」の実現にみたび挑戦するとの思惑を隠さない。国の統治機構の在り方に関わる政策だが、副首都がどんな機能を持つかなどは明確でない。国会会期を8日間延長してまで成立させたが、党利党略が過ぎる。
一方、衆院議員定数削減法案が先送りされたのは当然の帰結である。法施行から1年以内に結論が出なければ、自動的に比例45議席を減らす乱暴な内容だ。中小政党に不利で、少数意見が切り捨てられるとの懸念が強く、廃案こそふさわしい。
改正皇室典範も多くの疑問が拭えないままだ。旧11宮家の男系男子の養子縁組を可能とし、その子孫が男性なら皇位継承資格を持つ▽女性皇族は婚姻後も皇族身分を保持するが夫と子どもは一般人とする-の2点が盛り込まれた。衆参両院の正副議長が各党協議を踏まえてまとめた「立法府の総意」を逸脱し、衆参ともに全会一致とならなかった。
憲法が「国と国民統合の象徴」と定める天皇制の根幹に関わる問題にもかかわらず、丁寧な合意形成どころか、政府、与党はわずかな審議時間で異論や批判を封じた。総意を探る議論を仕切り直す必要がある。
国旗損壊罪法は、立法の必要性や処罰対象は極めて曖昧だ。憲法が保障する表現の自由を脅かし、違憲とも指摘される。恣意(しい)的に運用される危険性があり、国民を萎縮させる恐れがある。廃止を求め続けるとともに、運用状況を厳しく監視しなければならない。
野党は結束し監視を
首相が数頼みで押し切ったこれらの政策は衆院選で具体的な説明はなかった。内閣支持率は各種世論調査で下落傾向にある。ホルムズ海峡の危機は続き、円安の加速が物価高や生活に影を落とす。国民が望む政策とのずれや強引な政権運営に有権者は疑念を抱き始めたのではないか。
中傷動画疑惑を巡り、閉幕直前に秘書の陳述書を提出したが、首相の説明責任は残る。首相は批判や疑問に耳を傾け、誠実に答えることから逃げてはならない。
野党は個別に与党に歩み寄る動きも見られ、まとまりを欠いた。各党が結束し、ブレーキ役を果たせなければ、存在感は薄まるばかりだ。政治に緊張感を生み、信頼を取り戻すのは野党の責務でもあると肝に銘じてもらいたい。
























