熊本県で最大震度7を観測した地震で、住宅被害は3万棟を超える。1階が押しつぶされるなど崩れ落ちた民家が目につく。現行の耐震基準が導入された1981年以前の木造住宅を中心に被害が広がり、被災状況は31年前の阪神・淡路大震災と重なる部分が多い。防災を進める上で、建物の耐震性向上が最優先課題であることを改めて胸に刻みたい。
熊本県の19日時点の集計では、全壊した家屋は震度7を観測した宇城市、氷川町などで1500棟を超える。熊本は10年前に2度の震度7に見舞われており、その後に十分な補強や修繕がされていなければ、ダメージが蓄積し強度が落ちていることが懸念される。
阪神・淡路では約25万棟の家屋が全半壊し、犠牲者6434人の死因の多くが建物倒壊などによる「圧死」だった。被害拡大の要因と指摘されるのが、耐震基準が強化された81年よりも前に建てられた木造住宅のもろさだ。それ以降の住宅であっても、2000年に強化された耐震基準を満たしているかどうかで被害の程度に差が生じる。
国は「35年までに耐震性の不十分な住宅をおおむね解消する」と目標を掲げる。23年時点の耐震化率は全国平均で約90%だが、抽出調査を基にした推計のため、実際より数値が高くなる傾向が指摘される。それでも今回の地震で甚大な被害が出た氷川町は20年末時点で55%と全国平均を大きく下回っていた。宇城市は19年度末時点で70%、八代市も23年度末時点で81%にとどまる。
兵庫県は今年4月に耐震改修促進計画を改定し、35年までに耐震化率をおおむね100%にする目標を掲げる。23年時点で91・7%と全国平均よりやや高いものの、なお約19万8千棟の耐震性が不足している。
人口減少や高齢化が加速する地方、とりわけ過疎地では耐震性が不十分な古い家屋に高齢者だけで暮らす世帯が多い。氷川町の高齢化率は39%と熊本県の中でも高い。物価高も続く中、100万~300万円程度とされる改修費用の負担は高齢者には重荷だ。国や自治体は補助額の増額など耐震改修を後押しする施策をさらに強化する必要がある。
耐震化は人の命を守るだけではない。倒壊して道をふさぐなど救助や復旧の妨げになる事態を防ぐ。住める状態で家が残ることは生活再建を進める上での足掛かりとなる。建物全体の改修が難しくても、寝室の耐震シェルター化や「防災ベッド」の設置など、低コストの方法もある。制度の周知を徹底するべきだ。
地震に備えるには住宅の耐震化は基本である。重い教訓を踏まえた対策を急がねばならない。























