神戸新聞NEXT

 栃木県鹿沼市の東武日光線新鹿沼駅の線路上で20日、除草中の作業員4人が東武日光発浅草行きの特急列車にはねられる事故があり、全員が死亡した。駅のホームは下に人が逃げ込める構造になっておらず、約50キロで進入してきた列車から逃げる間もなかった。痛ましい限りである。

 栃木県警は、作業の元請け会社による安全管理が不十分だったとみて東武鉄道のグループ会社「東武建設」(栃木県日光市)を業務上過失致死の疑いで家宅捜索し、事故の経緯を調べている。運輸安全委員会も鉄道事故調査官3人を現地に派遣した。原因を徹底究明し、再発防止に生かさなければならない。

 東武鉄道によると、線路上で除草などの作業をする場合、見張りが列車接近を目視し、作業員に知らせる決まりになっている。当日は、列車側から見て作業現場の315メートル手前の場所に「中継見張り員」、約80メートル手前に「列車見張り員」を配置し、中継見張り員が列車を確認して旗を振ると、列車見張り員が作業員らに接近を知らせる手順になっていた。

 国土交通省によると、運転士は現場の約200メートル手前で、駅に近い列車見張り員が作業員の退避完了を知らせる旗を出したのを確認し、警笛を鳴らしたと説明した。一方、中継見張り員は、列車見張り員と「意思疎通できる状態ではなかった」と話しているという。

 運転士の認識と実際の現場状況は大きく食い違っており、見張り員との情報共有に手違いがあった可能性が高まっている。

 事故までに3本の列車が問題なく通過していたという。なぜ当該列車は事故を回避できなかったのか。複合的な要因が絡んでいることも考えられる。県警は複数の無線機を押収し、使用状況を調べている。あらゆる要素を視野に入れ、予断なく捜査や調査を進めてもらいたい。

 電車が走行しない夜間に除草作業を実施しなかった理由について、東武鉄道は「態勢を整えれば昼間でも安全に作業できると思った」とした。重大な結果を考えれば態勢は不十分だったと言わざるを得ない。

 ヒューマンエラー(人為ミス)は必ず起きるというのが、尼崎JR脱線事故をはじめ、多くの鉄道事故の貴重な教訓である。電車が往来する線路上で作業をする場合は、あらゆる人為ミスを想定した二重三重のバックアップ策が欠かせない。

 事故が起きた日は、元請け会社を含む複数社の10人が集まって作業をしていたという。元請けの安全教育や会社間のコミュニケーションが不十分だった可能性もある。東武鉄道グループ全体の安全管理の是非も当然、問われなければならない。