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 熊本県で最大震度7を観測した7月の地震は、県内にある多数の文化財にも大きな被害をもたらした。国特別史跡の熊本城(熊本市)や国名勝の庭園・松浜(しょうひん)軒(けん)(八代市)など、国指定の文化財だけでも約100件に上る。国や県の指定を受けていないものを含めればさらに増え、全容把握には時間がかかりそうだ。

 熊本城などは2016年の熊本地震でも被災した。城は「市民の精神的支柱」(大西一史熊本市長)である。他の文化財も同様だろう。郷土の誇りが再び傷つき、被災者は落胆しているに違いない。再建や修復に向け、国などによる手厚い技術的、財政的な支援を求めたい。

 10年前の地震で、熊本城は国重要文化財のやぐら、戦後に再建された天守閣を含む30件以上の建物が損壊し、50カ所の石垣が崩れた。同じく重文の阿蘇神社楼門(阿蘇市)や通潤橋(つうじゅんきょう)(山都町、23年に国宝指定)なども被害を受けた。通潤橋などは復旧し、熊本城の天守閣も21年に修復を終えた。だが城の石垣を元に戻す作業には手間を要するため、城全体の完全復旧は52年度の見通しとなった。歴史的な価値を維持しながら被災文化財を復元するのが、いかに困難かを再認識させられた。

 今回も熊本城の石垣が40カ所で崩れるなどした。52年度の目標がさらに遠のく恐れがある。震源に近い八代市では、松浜軒の建物が倒壊し、国登録有形文化財の老舗旅館「金波楼(きんぱろう)」では玄関などが崩れた。八代城跡の石垣も崩落した。国宝の青井阿蘇神社(人吉市)と通潤橋関連の建物、世界遺産を構成する万田坑(まんだこう)(荒尾市)と三角(みすみ)西港(宇城市)も被災した。松浜軒などの復旧に向け、文化庁はクラウドファンディングなどで寄付を募る官民連携の事業を始めた。支援の広がりが期待される。

 民間で所蔵する古文書や書簡、絵画、工芸品などの保全も急務だ。熊本県教育庁は「被災した古い資料、すてるの待って!! その資料は、みなさんの地域の宝です!!」とネット上で呼びかける。現地では、応急修理して一時保管する「文化財レスキュー」が既に始まっている。

 専門家らによる歴史資料の救出活動は、阪神・淡路大震災を機に全国に広がり、東日本大震災や10年前の熊本地震などでも実施された。今回の取り組みも、これまでの積み重ねが生かされたものと言えよう。

 能登半島地震があった24年、富山県の高岡市美術館は被災経験をもとに、文化財を「こころのインフラ」と位置付ける展覧会とシンポジウムを開いた。生活基盤と同じく、郷土の文化財も人々の復興には欠かせないものである。心を支えるインフラであるとの意識を共有したい。