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 富山市が2025年の国勢調査で人口を水増しした疑いがあるとして、総務省が市職員を氏名不詳のまま統計法違反容疑で富山県警に告発した。市役所には家宅捜索が入った。行政施策の土台となる統計への信頼を揺るがす深刻な不正行為であり、全容解明が欠かせない。

 不正は、戸別訪問した調査員が「居住実態がない」としてリストから抹消した世帯を、市職員が特段の根拠もなく「存在するもの」と書き換えた疑いがある。総務省が速報値を精査する過程で、鉛筆書きの二重線を消しゴムで消すなどの不適切な処理が発覚し、国勢調査では初となる刑事告発に踏み切った。水増しは2千人以上とみられる。改ざんは極めて悪質で看過できない。

 5年に一度の国勢調査は、外国人を含む日本に暮らす全ての人を対象に居住や就労の実態を調べる。基幹統計の中で最も重要なものだ。数値は国が自治体に配る地方交付税の算定に使われるほか、衆院小選挙区の区割り、福祉や都市計画、災害対策、産業振興など国や地方の施策立案に用いられ、民間もデータを活用している。

 不正がまかり通れば、政策判断や制度設計をゆがめ、国民生活に影響を及ぼしかねない。

 富山市の人口は、不正発覚前の5月の速報値で40万2133人だったが、9月の確定値で39万9197人に修正された。水増しにより、26年度の地方交付税を本来よりも約6千万円多く受け取っていた。40万人台を割り込むと「衰退を印象づける」と行政側が焦り、改ざんに及んだとの見方がある。

 藤井裕久市長は、複数の職員が人口の水増しに関わっていたことを認め、謝罪した。ただ、幹部職員の関与は把握していないと主張している。数値を操作すれば刑事罰を科せられる違法行為を現場の判断だけで行うとは考えにくく、組織的な関与が疑われる。捜査を待たず、独自に第三者調査委員会を設置して不正の経緯と原因を究明しなければならない。市民や議会への説明責任を果たすとともに、再発防止策を講じる必要がある。

 人口の水増しは過去にも起きている。愛知県東浦町では、10年の国勢調査で当時の副町長が職員に指示したと認定され、有罪判決を受けた。市制移行に必要な「人口5万人」を満たすためだったとされる。

 国は「地方創生」を掲げ、自治体に子育て支援や移住促進などの施策を競わせてきたが、大半は人口減が止まらない。減ることを「衰退」と捉えず、地域社会が縮小していく現実を直視し、持続可能な地域づくりに取り組むべきだ。