日銀は、物価の上昇率が目標としていた2%に到達したと表明した。10月30日に開いた金融政策決定会合後の記者会見で、植田和男総裁は「一つの節目」と述べた。
物価が下落するデフレ状態からの脱却を掲げ、第2次安倍政権と日銀が2%の物価目標を定めたのは2013年1月である。同年3月に日銀総裁に就任した黒田東彦(はるひこ)氏は「2年で2%」と宣言し、大規模金融緩和やマイナス金利などの景気刺激策を導入したが実現せず、目標に達するまで14年近くかかった。
日本はデフレからようやく脱却したと言える。ただ、国民の多くは「物価上昇は2%どころではない」と感じているはずだ。総務省が発表した生鮮食品を除く全国消費者物価指数の25年平均は、前年比3・1%上がり、4年連続で2%を上回った。中でも食料は7・0%上昇し、家計を圧迫している。
日銀が2%を目標としたのは「基調的な物価上昇率」のことである。消費者物価指数から原油価格の急変といった一時的な要因を除いてインフレ予想などを加味したもので、実際の上昇率よりも低くなる。一般消費者の生活実感とのギャップが生まれるのはこのためだ。
今後、金融政策はインフレの加速を抑え、物価上昇率を2%程度で定着させることに軸足を移す。今回の金融政策決定会合では政策金利を1・25%程度で据え置く一方、植田総裁は物価が上振れしないよう利上げを続ける考えを示した。
円安や原油高、人工知能(AI)関連の需要増などで想定を超える物価上昇のリスクが指摘される。日銀は利上げによる景気への影響を見極めながら、物価の持続的な安定に総力を挙げてほしい。まずは12月の金融政策決定会合で利上げするかどうかが焦点となる。
日本が物価上昇に転じたのは、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰や、過度な円安が要因だ。生活水準の改善には、物価に見合う賃金の上昇につなげ、経済を安定的な成長軌道に乗せる必要がある。人手不足を背景に大企業で相次ぐ賃上げを、中小企業にも広げることが欠かせない。
高市早苗首相は10月の国会答弁で「リフレ政策が必要な局面ではない」と金融緩和を志向する持論を封印した。しかし、消費税減税や370兆円超の官民投資など政権が進める政策は財政不安を招き、さらには需要を過度に刺激してインフレを加速させかねない。
政府は財政規律を立て直し、実効ある成長戦略に取り組まねばならない。脱デフレ時代に即した政策への転換を議論するときだ。























