2023年秋、米ニューヨーク(NY)に拠点を移してからもうすぐ7年がたとうとしている。初めてNYを訪れたのは11年前、私は悩める29歳だった。英語もしゃべれず、知り合いもおらず、ギターを一本担いで何かの答えを探すかのように、たった1人で2カ月間アメリカ中を旅していた時、最後に訪れたのがNYだった。
私はミュージカルが大好きなので、ブロードウェイのショーを一つ二つ見られたらそれで満足! という気持ちで、最初はさほどNYの街自体に興味を持っていなかった。ところが、数日滞在してみると自分でも驚くほどにNYの街に魅了され、旅を終えて日本に帰る頃には「年内に全てをやめてNYに引っ越さなくては!」という思いに駆られた。
8歳の時、映画「サウンド・オブ・ミュージック」を見て音楽の素晴らしさを知り、将来は絶対歌手になると決めて、毎日家で歌の練習を始め、その後19歳からは独学でギターと作詞作曲も始めて、ありがたいことに2005年にメジャーデビューすることができた。でも、人生はそんなに甘くない。デビューはできてもなかなか売れなかった。がむしゃらに頑張っても曲はヒットせず、デビューから5年がたち、メジャーの契約が切れる寸前、最後のリリースチャンスとなったアルバムで「トイレの神様」ができた。