環境問題といえば、文字どおりのわたしたちを取り巻く周囲世界とその生態系の保全の問題だということから、つい空間的なイメージのなかで考えてしまう。が、環境問題はじつは歴史感覚の問題、より正確には〈世代間倫理〉の問題だと、かなり早くから指摘していたのは、哲学者の加藤尚武である。
加藤は、その著「環境倫理学のすすめ」(1991年)のなかで、近代の社会倫理は「相互性」、つまり、じぶんがされたくないことは他人にもしない、たがいの権利をできるかぎり尊重する、みずからの行動指針を他のだれにも適用できるような普遍的なものにする…という、「互恵性」を基調とするものだと指摘した。
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