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築100年の古民家を改修し、集落活性化に取り組む徳網武男さん(右)と徳網登さん=豊岡市出石町奥山(撮影・中西大二) 無人になった集落の「お宮さん」。最後の1世帯が合祀の記録を石柱に残した=宍粟市山崎町母栖(撮影・大山伸一郎) 神戸新聞NEXT 神戸新聞NEXT
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築100年の古民家を改修し、集落活性化に取り組む徳網武男さん(右)と徳網登さん=豊岡市出石町奥山(撮影・中西大二)

無人になった集落の「お宮さん」。最後の1世帯が合祀の記録を石柱に残した=宍粟市山崎町母栖(撮影・大山伸一郎)

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■山奥の過疎集落挑む再興

 山に囲まれたつづら折りの道を上ると、こぢんまりとした家並みが見えてきた。豊岡市出石町の奥山集落。鳥のさえずりと小川のせせらぎが心地よい。

 昭和30年代には40世帯近くが住んだ。しかし、今は6世帯11人。最も若い住民は64歳で、高齢化率は90%を超える。危機感を募らせた区長の徳網武男さん(73)は「もう一度、子どもたちの声を取り戻したい」と7年前から活性化に挑む。

 平成を通じ、日本の少子化と高齢化は急速に進んだ。兵庫県内の出生数は平成初年の5万4千人から2割減の4万2千人に。逆に65歳以上は64万人から2倍超の148万人に増えた。1次産業の衰退も相まって、農山漁村は急速に人口を減らした。宍粟市山崎町の母栖(もす)集落など住民がいなくなった集落もある。

 徳網さんも都会への憧れから、20歳を前に大阪に出た。住宅販売会社などで働いたが、勤務先の経営が行き詰まり、妻と3人の子どもを連れて故郷に戻ったのは昭和末期の1987年。42歳の時だった。

 かつて村の生計を支えた養蚕や炭焼きは、すっかり下火になっていた。子どもは、自身が育てる3人のほかに小学生1人。その4人も、成長すると集落を離れていった。

 周囲の家々も、高齢の主(あるじ)が亡くなると1軒、2軒と姿を消した。「このままでは集落がなくなる」。2011年、小規模集落の活性化を支援する兵庫県の補助事業を知り、手を挙げた。

 支援を求めたのは行政だけではない。出石の建設会社で役員を務める幼なじみの徳網登さん(68)。「故郷を見捨てるのか」という武男さんの説得に、「自分だって奥山を失いたくない」と協力を決めた。

 県が派遣したアドバイザーと計画を練り、採択の可否を決める審査会に2人で臨んだ。審査員からは「山奥の集落に金をかけても無駄では」など厳しい指摘もあったが、しどろもどろになりながら再興にかける熱意をアピールした。

 緑豊かな自然が残っていること。江戸時代に採掘された金山の坑道跡を村おこしの目玉とするため、大量の土砂を手作業で撤去したこと。そして、神戸や大阪の奥山出身者らが作業を手伝ってくれたこと。持ち時間が過ぎても「まだ伝えきれていない」と訴え続けた。

 結果は合格。早速、無人になっていた築100年の古民家を団体客が利用できる交流拠点に改修し、田舎暮らしを体験できる長期滞在型の貸し民家を4軒建てた。立ち上げた住民組織には集落を出た出身者も加わり、「ほたる祭り」や稲刈り体験などを企画する。

 夏場を中心に、ボーイスカウトや都会の学習塾が合宿で交流拠点を訪れるようになった。近くの川にマスやヤマメを放つ「つかみ取り体験」は特に人気で、リピーターも生んだ。昨年は21団体が利用し、子どもたちが元気な声を響かせた。

 「そらぁ、見ているだけでもうれしいよ」。2人の徳網さんは声をそろえる。集落再興が一筋縄でいかないことは分かっている。取り組みを継続するのも大変だ。それでも、夢をあきらめるつもりはない。

 「ここを訪れた100人に1人、千人に1人でもいい。将来、奥山に定住する子どもが出てくれば」

■「限界」超え、消えた古里

 平成時代の30年間に一気に進んだ少子高齢化は、確実に集落を縮ませた。

 世帯数50戸以下で、高齢化率40%以上。兵庫県による「小規模集落」の定義だ。県が初めて実態調査した2007年の小規模集落数は、神戸・阪神間などを除き221集落。その後一貫して増え、16年には502集落と2・3倍になった。

 16年の結果を地域別に見ると、最多は但馬の185集落(07年は95集落)で、次いで淡路が99集落(同44集落)、西播磨が91集落(同49集落)。増え幅が大きかったのは丹波で、07年の24集落から3・5倍の84集落になった。

 豊岡・奥山集落のように踏ん張る集落がある一方で、「限界」を超えて無人になった集落もある。宍粟市山崎町の母栖(もす)集落はその一つ。中国自動車道山崎インターチェンジ(IC)から車で20分ほどの山中にある。

 最後の住民は永井しげ子さん(88)。6年前、夫利一さんが体調を崩したのをきっかけに、同ICにほど近い次男康博さん(59)宅に移り住んだ。利一さんは昨年7月に亡くなった。

 4月下旬、しげ子さんと康博さんに集落へ案内してもらった。今も時折、庭の手入れなどに訪れるという。しげ子さんが見合いで嫁いできた1954(昭和29)年当時は、山の斜面に7軒が立っていた。水道事情が悪く、「増やしても十数軒まで」というルールが代々、伝わっていたらしい。

 畑で季節の野菜を育て、寿司(すし)やまぜご飯を作ってはお裾分けした。「人数も少ないから、仲が良かったねえ」としげ子さんは懐かしむ。しかし、子どもたちは次々と巣立ち、高齢者ばかりになっていった。お隣さんが亡くなり、最後の1軒となったのは阪神・淡路大震災があった95年前後。それから20年近く、夫婦だけで集落を守ってきた。

 「不便だったけど、それが当たり前だった」としげ子さん。特に利一さんは母栖への愛着が強かった。“証し”があると聞き、山の斜面をさらに上がった。

 「あれがお宮さんです」。康博さんが指し示す先を見ると、30段ほどのこけむした石段の上に、古びた小さな祠(ほこら)が見えた。その前に、真新しい高さ1・3メートルほどの石柱が立つ。正面には「山神社」、側面には「五十波(いかば)野口神社ニ合祀(ごうし)」と彫られていた。集落の終わりを覚悟した利一さんが、石材店に設置してもらったという。野口神社は、少し離れた五十波集落にある。

 「わが身が生まれ育った土地。未練は強かったと思いますよ」と康博さん。しげ子さんも「最後まで集落のことを気にしていたんかなあ」と言って続けた。

 「時代の流れだから仕方ないけれど、母栖の名前もなくなってしまうのかねえ…」。60年近く暮らした集落を見渡し、少し寂しそうに目を伏せた。

     ◇

 平成は「1・57ショック」で幕を開けた。

 女性が生涯に産む子どもの推定人数を示す「合計特殊出生率」。平成が始まった1989年の数字は、「ひのえうま」だった66(昭和41)年の1・58を下回る1・57を記録し、日本社会を揺さぶった。

 それ以降も同出生率の下降は止まらず、05年には1・26にまで低下。その後はやや上向き、16年は1・44まで持ち直したが、人口規模の維持に必要な2・1程度には遠く及ばない。

 兵庫県も同様のカーブを描く。市町別で見ると、17年の出生数が89年を上回るのは三田市のみ。減り幅の大きい神河町や佐用町、香美町、新温泉町は3分の1の水準になり、神戸や尼崎、姫路市などの都市部も2~3割減った。

 出生数から死亡数を差し引いた自然動態も、89年は全41市町のうち35市町がプラスだったが、17年は西宮、伊丹市のみだった。

 高齢化も加速している。直近の15年国勢調査によると、日本の65歳以上の割合は26・6%。90年比で14・5ポイント上昇し、世界最高水準となった。一方で、15歳未満は12・6%で90年から5・6ポイント下がり、世界で最も低くなっている。

 兵庫でも00年に65歳以上の人口が15歳未満を上回り、その差は拡大の一途をたどる。高齢化率が90年時点で20%に達していたのは養父、淡路、佐用の3市町だけだったが、15年には全市町が20%を超え、うち半数を超す22市町は30%を突破した。

 少子化と高齢化の同時進行は、集落維持だけでなく、医療や介護、年金といった社会保障の安定や労働力の確保にも大きく影響する。次の時代に積み残された課題は重い。(田中陽一)

2018/5/21

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