連載・特集 連載・特集 プレミアムボックス

転機を生きる

  • 印刷
合併当時を「地域の思いを一つにする難しさを実感した」と振り返る旧緑町長の金山和永さん=南あわじ市内(撮影・斎藤雅志) 上田多紀夫さん 馬場雅人さん 奥田清喜さん
拡大

合併当時を「地域の思いを一つにする難しさを実感した」と振り返る旧緑町長の金山和永さん=南あわじ市内(撮影・斎藤雅志)

上田多紀夫さん

馬場雅人さん

奥田清喜さん

  • 合併当時を「地域の思いを一つにする難しさを実感した」と振り返る旧緑町長の金山和永さん=南あわじ市内(撮影・斎藤雅志)
  • 上田多紀夫さん
  • 馬場雅人さん
  • 奥田清喜さん

合併当時を「地域の思いを一つにする難しさを実感した」と振り返る旧緑町長の金山和永さん=南あわじ市内(撮影・斎藤雅志) 上田多紀夫さん 馬場雅人さん 奥田清喜さん

合併当時を「地域の思いを一つにする難しさを実感した」と振り返る旧緑町長の金山和永さん=南あわじ市内(撮影・斎藤雅志)

上田多紀夫さん

馬場雅人さん

奥田清喜さん

  • 合併当時を「地域の思いを一つにする難しさを実感した」と振り返る旧緑町長の金山和永さん=南あわじ市内(撮影・斎藤雅志)
  • 上田多紀夫さん
  • 馬場雅人さん
  • 奥田清喜さん

■重い選択、まちの未来懸け  

 投票箱の中には「まさかの結果」が入っていた。

 2002年11月、兵庫県淡路島南部の旧緑町で行われた住民投票。西淡、三原、南淡町との4町合併か、洲本市、津名、一宮、五色町との1市4町か、単独か-。

 町の未来を問う投票で住民が示したのは、4町合併の道。町長だった金山和永さん(78)は言葉を失い、肩を落とした。

 それもそのはず。その3カ月前、4町合併を推進していた当時の町長がリコール運動を受けて辞職。再び町長選に立候補し、元助役の金山さんとの一騎打ちになった。金山さんは「洲本市などとの広域合併」を訴えて当選を果たす。それだけに、住民投票の結果には目を疑った。

 「自分の主張は町民に届いたと思っていたが…」

 緑町は、他の3町より多くの説明会を開催。住民からボイコットや嫌がらせを受けたこともあり、眠れない日々が続いたが、それでも金山さんは“淡路1市”構想を訴え続けた。「島が一丸とならなければ、将来的な発展はあり得ない」との思いからだった。

 住民投票で4町合併が決まると同時に“淡路1市”構想も消滅。淡路島3市体制を決定づけた。緑町は05年1月、合併により南あわじ市となった。

 「もう少し時間があれば、より丁寧な説明ができたかもしれない」。そう悔やんだこともあるが、今はまっさらな気持ちという。

 「民意を反映させ、自分にできることはやった、という自負はある」

     ◇

 国が推進した「平成の大合併」。動きが本格化する転機の一つは、1999年の合併特例法改正だ。

 合併した自治体に対し、公共施設整備などに充てる借金の大半を国が負担する「合併特例債」を創設。一方で、国が自治体に配分する「地方交付税」の大幅な削減方針も示された。この“アメ”と“ムチ”により、多くの市町村が国の狙い通り合併へと踏み切った。

 総務省によると、合併件数はピークの05年度に325件、平成全体では649件を数える。市町村数は99年4月の3229から現在は1718に半減した。

 兵庫県内でも91市町が41市町に減少。平成の大合併の全国第1号となった99年4月の篠山市から、06年3月の加東、姫路市まで、計19市町が合併により新市となった。

     ◇

 1市10町から3市となった淡路島。かつて20万人を超えていた島内人口は、約13万人になった。

 そして今、金山さんらがかつて描いた島内1市構想が再び浮上している。

 18年秋には、島内3市長が「淡路島1市」を語り合うフォーラムを開催。淡路青年会議所は、各市に合併協議会の設置を求めている。背景には、予想を超える速度で進行する人口減少と高齢化がある。

 「人間は不思議なもので、1歩先の未来や課題は予測できても、2歩先、10歩先はなかなか考えられない。20年後、50年後を見据えた次の一手を、新しい世代に託したい」。金山さんは静かに語った。

■枠組み巡り議論噴出

 平成から令和へと変わる5月1日。改元と同時に、改名する自治体がある。

 「丹波篠山市」となる篠山市。1999年4月、4町の合併で発足した。「平成の大合併第1号」として脚光を浴び、市は連日、全国からの視察に沸いた。

 だが、篠山市誕生までには、昭和30年代から構想が持ち上がっては5回も決裂してきた歴史があった。

 「篠山市は6度目の悲願でした」。合併協議会の事務局長だった上田多紀夫さん(72)は感慨を込める。

 モデルと言われた合併だが、第1回協議会を非公開とした点や、住民投票を行わなかった点から「行政主導」との批判もあった。しかし、40年以上続けた模索の歴史が下地になったとされる。

 実は、上田さんは75年に旧篠山町が隣接2町と合併した際、座り込みなどで激しく抵抗した。職員削減で行政サービスが低下し、衰退が進むと感じたという。

 時を経て、推進派に転じた理由は-。「少子高齢化や人口減など、一つの自治体では解決できない問題が出てきた」と説明する。

 市は合併特例債で市民センターなどを整備したが、2004年度から地方交付税が削減され財政が悪化。負債が重くのしかかる。

 市は改名による経済効果を52億円以上とはじくが、上田さんの表情は険しい。

 「合併や改名はゴールではなく通過点。効果をどう出すかが大切」

     ◇

 合併に前向きだった篠山とは対照的に、多くの自治体は地方交付税の減額方針に危機感を募らせ、重い腰を上げた。だが合併条件を巡る協議は難航を極めた。

 「5町合併の議論は不毛だった」。旧温泉町最後の町長で、新温泉町最初の町長でもある馬場雅人さん(68)は言い切る。

 5町とは浜坂、温泉、村岡、美方の美方郡4町と、城崎郡香住町を指す。合併で市への昇格を目指したが、本庁舎の位置を巡って人口トップの香住と2位の浜坂が対立。温泉は隣接する浜坂を支持したが、他の2町は香住との関係が深く、浜坂不利とみられた。「最初から結論ありきだ」。馬場さんは激しく反発した。

 結局、5町協議会は解散し、温泉は浜坂と合併協議会を結成。庁舎位置は浜坂、町名は温泉で合意したが、町名が消えることへの浜坂町議会の反発で破談寸前まで追い詰められる。

 馬場さんは県幹部の仲介で浜坂側と折衝。「温泉」に「新」の1字を加えた町名で合意し、05年10月に新温泉町が発足した。「(町名は)合併後検討する」とただし書きが付いたが「合併はニアイズベター(近くが望ましい)」と割り切った。人口1万人未満の自治体は、行政機能を維持できなくなるという空気が当時はあったという。

 05年4月に豊岡市などと合併した旧但東町。当初は同じ郡の出石などとの3町合併を目指した。距離的に遠く、人口規模が大きい豊岡と合併すると求心力低下の恐れがあった。3町合併でも人口は3万人を超え、市への昇格条件を満たす。

 だが、豊岡との関係が深い出石では異論が強かった。結局、但東も豊岡市など1市5町の合併協議に参加し、新市へ移行した。

 「メリットは大きかった」。最後の町長、奥田清喜さん(78)は強調する。地域に念願の救急車が配備され、インフラ維持の不安も減った。一方で、住民の要望を吸い上げるパイプはどうしても細くなる。

 「1町単独も思い描いたが、人口減少が進む中では難しい。地域の絆を維持しつつどう魅力を高めるか」

     ◇

 単独の道に活路を見いだした自治体もある。

 03年に合併の是非を問う住民投票を行った太子町。姫路市との合併▽合併しない▽龍野市と揖保郡4町-の選択肢から住民が選んだのは、5市町合併だった。

 旧龍野市などが始めた「揖龍合併協議会」に参加。しかし翌年、太子町は脱退を表明する。途中参加から1年余りの決断だった。

 「住民投票では『姫路市』『合併しない』の合計が過半数。再度の住民投票を求める声も根強く、単独への機運が高まった」。当時の副町長、八幡儀則さん(71)はそう振り返る。

 姫路市に隣接する立地や交通アクセスの良さから、1951年の誕生以来、同町の人口は右肩上がりが続いた。単独の道を選んだ後も人口は増加した。

 「財政状況は決して良くはなかったが、町の借金は比較的少なかった」と八幡さん。堅実を心掛ければ単独運営は可能と決断した。

 人口減少時代を迎え、自治体間の競争は激しさを増している。「子育てや教育に力を入れないと今後生き残れない」と力を込めた。

(末永陽子、田中伸明)=おわり=

【兵庫県内の「平成の大合併」を巡る動き】

・1999(平成11)年 

 平成の合併第1号の篠山市が誕生(4月)改正合併特例法が成立(7月)

・2000年

 与党協議会が「1000自治体目標」の方針を表明

・04年

 養父市が誕生(4月)丹波市が誕生(11月)

・05年 南あわじ市が誕生(1月)豊岡市、宍粟市、香美町、朝来市、淡路市が誕生(4月)たつの市、西脇市、佐用町、新温泉町、三木市が誕生(10月)多可町、神河町が誕生(11月)

・06年 洲本市が誕生(2月)加東市、姫路市が誕生(3月)合併した自治体に認められる特例債が期限を迎える(3月)

・10年 国が合併主導を終了

・14年 栃木県岩舟町が栃木市へ編入。平成最後の合併となる

2019/4/29

天気(8月22日)

  • 32℃
  • 27℃
  • 20%

  • 33℃
  • 25℃
  • 40%

  • 34℃
  • 27℃
  • 20%

  • 35℃
  • 27℃
  • 30%

お知らせ