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転機を生きる

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不登校の経験があり、今はギター講師として働くユカさん
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不登校の経験があり、今はギター講師として働くユカさん

不登校の経験があり、今はギター講師として働くユカさん

不登校の経験があり、今はギター講師として働くユカさん

 文部科学省の調査では、2016年度に学校を30日以上欠席した不登校の小中学生は全国で約13万4千人。全児童生徒数の1・35%で、割合では調査を始めた1990年度以来、最多になった。兵庫県に住むユカさん(24)=仮名=も、小学3年から中学3年まで学校の教室に入ることができなかった。その後、全寮制の高校を経て大学に進学し、今はギター講師として働く。「学校に行っていたら全く違う人生になったと思うけど、後悔はしていない」とユカさん。「やり直すのに遅すぎるなんて、きっとない」と話す。

 休み始めたはっきりした原因は、自分でも分からない。ただ担任が苦手で、クラス内でいじめる相手が次々に変わる女子の人間関係にも疲れ果てていた。

 朝は毎日、学校に行くか行かないかの修羅場。母が出勤するまで耐えれば「自由」だった。好きな絵を描いたりインターネットをしたりして、決して寂しくはない。しかし、頭の片隅にはいつも「みんなちゃんと学校に行っているのに…」という思いがあり、「いつまで私はこんなことしてるんだろう」としばしば沈み込んだ。

 小学5年になると、保健室には行けるようになった。養護教諭と一緒に給食を食べ、頼まれて応急手当の表にイラストを描いた。中学校の3年間はほぼ「別室登校」。休む理由や勉強のことを尋ねられることはなかったが、進学への不安と焦りは募る一方だった。そんなとき、近所の絵画教室の講師に県内の全寮制高校を紹介された。「人生を切り替えるチャンスかもしれない」と入学を決めた。

 心機一転のつもりだったが、寮の人間関係でつまずく。鬱々としていた1年の秋、文化祭で聴いた上級生のバンド演奏が、心と体に響いた。先輩に誘われてギターを始め、女性のリードギターは珍しいと聞いて負けん気が募った。毎日音楽室に入り浸り、夜も部屋で指づかいを練習。同級生とバンドを組み、プロの曲をコピーした。

 大学は特技の絵を生かしてデザイン学科へ進み、サークルでギターを続けた。「大学には一風変わった人が多くて、自然に溶け込めた」。不登校の経験を打ち明けても、特に驚かれなかった。デザイン系の会社を経て、好きなギターの講師を始めた。今は、大阪や兵庫で中高生や主婦らを教える。「自分が教えて上手になっていくのを感じると、すごくうれしい」と充実感を漂わせる。

 高校の同級生や教師らとは今もつながっている。社会人になった後、みんなで城崎へ旅行に出掛けた。カニをほおばりながら、「自分たちのお金で、カニを食べられるようになったんやなぁ」としみじみ振り返り、笑い合った。

 「大学や、大学以上の社会に出たら、自分が思うほど『不登校』を気にしなくていいんだな、と思った」とユカさん。学校に行けなかったころを振り返り「何かタイミングがあれば、この状況を抜け出したいとずっと思っていた。でも怖い気持ちもあって…。保健室の先生、高校の先生、そして親も、無理しなくていいよと焦らずに見守ってくれた。それがありがたかった」と話す。

 「もし、今悩んでいる子に声を掛けるなら?」と記者が尋ねると、少し悩んでこう答えた。「何か興味のあることがあったら、それを大切にしてほしい。道は一つじゃないから」

2018/9/17

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