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生まれ育った神戸に戻って営業マンを続ける元山一証券社員の大神勇二さん=神戸市中央区三宮町1(撮影・吉田敦史) 株主優待券を売買する会社の経営に転じた元山一証券神戸支店長の橘孝介さん=東京都中央区日本橋室町1(撮影・西岡正) 神戸新聞NEXT 神戸新聞NEXT 神戸新聞NEXT
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生まれ育った神戸に戻って営業マンを続ける元山一証券社員の大神勇二さん=神戸市中央区三宮町1(撮影・吉田敦史)

株主優待券を売買する会社の経営に転じた元山一証券神戸支店長の橘孝介さん=東京都中央区日本橋室町1(撮影・西岡正)

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■山一破綻、元社員いばらの20年

 電光掲示板に並んだ上場企業の株価が、小刻みに上下する。買い時か、売り時か。有望な銘柄は-。

 神戸・三宮の岡三証券神戸支店。個人営業を担う大神勇二さん(45)が得意客らに電話をかけていく。世界経済に目を凝らし、市場の反応を見極めながら、果敢な投資を後押しする。

 ただ、短期の売買だけでは急落時に深手を負いかねない。戦後の経済成長で上昇を続けた株価は、平成に入って乱高下が目立つ。リスクを分散させるため長期保有の投資信託なども紹介する。顧客にとっては「利益の最大化だけでなく精神的な安定も大事です」。

 山一証券の元社員。当時は株取引を中心に「会社のために稼ぐことが喜びだった」。その山一は、バブル崩壊後の株価下落で巨額の損失を抱えて破綻。曲折を経て今、歩合制の契約社員として古里の神戸にとどまり、息の長い運用を支える手法を追求する。

    □

 「社員は悪くありません」。四大証券の一角にある山一が自主廃業を発表したのは1997年11月24日。従業員約7500人を抱える企業の消滅が決まった。野沢正平社長は号泣し、金融危機を象徴する一幕となった。

 大神さんは神戸市北区出身。兵庫県内の大学を卒業し、95年に山一に入社。自主廃業時は初任地の大宮支店(埼玉県)にいた。

 すでに発表前の週末には破綻の報道が駆け巡った。ちょうど同僚の結婚式があり、スピーチで祝福の言葉に「会社はつぶれるけど…」と付け足したのを鮮明に覚えている。自虐的な笑いで不安を打ち消すしかなかった。社長会見の中継を、どこで見たか、定かでない。「ぼうぜんとしていた」

 担当地域をしらみつぶしに回るローラー営業で上司に鍛えられた。全国の同期約180人の中で上位10位以内の成績が誇りだったが、発表後は針のむしろだった。「大損だ」「預けた株券をすぐに返せ」。電話は鳴り続け、翌98年の3月末まで残務整理を続けた。

     □

 同4月、再就職の受け皿となった外資系のメリルリンチ日本証券に移った。希望した神戸支店で「骨をうずめる」と決め、一から顧客開拓に励んだが、メリルは4年で神戸から撤退した。2002年9月、私物を積んだ台車を押し、近接する岡三のオフィスへ移った。

 試練は続く。08年に米国発の世界同時不況リーマン・ショックが起き、09年にかけて株価が暴落した。「一部に大もうけした人もいた。でも、自分は普通の証券マン。読めなかった」。顧客の資産は瞬く間に半分以下に。痛恨の極みだった。

 それでも、地道に営業を続けた。株偏重を改め、提案する金融商品の幅を広げて、医師、中小企業経営者、大学教員、サラリーマン、土地所有者ら百数十人を抱えるまでになった。荒波にもまれながら、会社目線から顧客目線へ転換した。

 苦心の20年だった。「家庭を持つのも遅れた。多くの元山一社員に同じような苦労があったと思う」

■バブル経済のツケ重く

 平成が始まった1989年。日本は「バブル経済」を謳歌(おうか)していた。同年12月29日には、日経平均株価が史上最高値の3万8915円87銭をつけた。

 しかし、年が明けると状況は一変する。3月に株価は3万円を割り、その2年後には2万円を切った。銀行や証券会社は、土地と株価の上昇を前提に拡大させた融資や運用があだとなり、巨額の不良債権や含み損を抱え込んだ。

 後遺症は重く、97年に三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券が、98年に日本長期信用銀行、日本債券信用銀行が経営破綻。「そのうち株価は上がる」という根拠のない期待が各金融機関の対応を遅らせた。

 その象徴が山一だ。法人向け取引で生じた2千億円以上の損失を簿外で処理し、隠し続けた。同社で社長、会長を務めた実力者の行平次雄氏(故人)ら当時の経営陣は、株価さえ上がれば何とかなる-との思いがあったとされる。しかし、最後は行き詰まり、自主廃業に追い込まれた。

 破綻当時、取締役に昇格したばかりだった篠山市出身の堀嘉文さん(74)は、原因究明の社内調査に加わった。「損失隠しの口座の存在など、破綻につながった不正は初めて知る内容ばかりだった」と明かす。

 「なぜ山一が…」「支店に籠城してでも仕事を続けたかった」。やり場のない怒りを押し殺すしかなかった。

 山一が自主廃業を発表した翌日。97年11月25日には、神戸、姫路、明石、西宮の兵庫県内4支店にも、早朝から株券の返還などを求める顧客が次々と訪れた。

 社員らはその後、ほとんど休まずに資産返却などの作業を続けたという。そして明石、西宮両支店は98年2月末までに閉鎖。神戸、姫路の2支店は取扱高が大きく作業に時間がかかり、同3月末に閉店した。

 当時の神戸支店長、橘孝介さん(69)は、悔しさを胸の底にしまってきた。現在は東京で株主優待券を売買する会社を経営する。同僚に再会したらどんな言葉を交わすかと問うと、「あれから自分も一生懸命だったし、みんなも頑張ったのだろうねというだけ」と話す。

■合従連衡、問われる顧客重視

 今年4月、兵庫の金融史に新たな一ページが刻まれた。神戸に本店を置く第二地方銀行のみなと銀行と、大阪を拠点にする関西アーバン、近畿大阪の2銀行が経営統合した。3行を束ねる持ち株会社、関西みらいフィナンシャルグループの菅哲哉社長は式典で「各行の強みを共有して圧倒的な利便性を提供したい」と強調した。

 みなと銀は99年、いずれも神戸に本店を置く阪神銀行がみどり銀行を吸収合併して誕生した。バブル崩壊後の兵庫の金融再編を象徴する存在だ。

 再編の発端は95年8月、みどり銀の前身、兵庫銀行(兵銀)の破綻だった。兵銀は、バブル期に高い金利で預金を集め、不動産関連に融資して規模を拡大。第二地銀トップとなるが、バブル崩壊で不動産価格が下落し不良債権が膨らんだ。阪神・淡路大震災も追い打ちをかけた。

 兵銀の破綻は、復興を進める被災地にとって痛手となる。地元経済界などは資金を集め、兵銀の経営を引き継ぐ受け皿銀行として、みどり銀を設立した。

 しかし、兵銀から引き継いだ不良債権の負担は重く、みどり銀は当初から赤字となり、苦境に立たされた。同行から統合を打診された阪神銀が、地域への影響などを考慮し、吸収合併を決断した。

 2000年には、太陽神戸銀行を前身とするさくら(現三井住友)銀行の子会社となり、同行から一部支店を譲り受けるなど経営基盤を強化した。さくら銀は01年、住友銀行と合併して三井住友銀行となり、みなと銀はその子会社となった。

 次の転機は08年のリーマン・ショック。中小企業の経営が厳しくなって貸し出しが減り、経営状況が悪化した地銀が、再編の動きを始める。

 10年3月、三井住友銀子会社の関西アーバン銀行と、びわこ銀行が合併。三井住友銀の奧正之頭取(当時)は、同じ子会社のみなと銀について「兵庫で存在感があり、今回の(合併の)延長線上にはない」とした。

 現在、日銀の「異次元の金融緩和」が地銀の経営を圧迫し、全国で再編が進む。中でもみなとと関西アーバンは、三井住友銀行傘下からりそなホールディングス傘下に移るドラスチックな再編で世間を驚かせた。

 銀行や証券会社など合従連衡を繰り返す金融機関。生き残りの鍵は、規模だけでなく、課題の解決に寄り添う顧客重視の経営にもある。(内田尚典)

2018/7/16

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