「大会では全く緊張しなかった」とほほ笑む金家渚さん=兵庫県太子町太田、町立太子東中学校
「大会では全く緊張しなかった」とほほ笑む金家渚さん=兵庫県太子町太田、町立太子東中学校

 思春期(ししゅんき)は周(まわ)りとの違(ちが)いに悩(なや)み、もがきながらも少しずつ成長していく大切な時期です。そんな思春期真っただ中の中学生が日頃(ひごろ)感じていることや考えていることを発表する「少年の主張(しゅちょう)兵庫県大会『中学生のメッセージ2023』」が、9月23日に神戸市中央区の県民会館で開かれました。最優秀賞(さいゆうしゅうしょう)の知事賞に輝(かがや)いたのは、太子(たいし)町立太子東中学校1年の金家渚(かなやなぎさ)さん(12)。「自分らしく生きる」というテーマで発表しました。金家さんの「自分らしさ」について話を聞いてみました。(綱嶋葉名)

 金家さんは、生まれつき集団(しゅうだん)行動などが苦手な特性(とくせい)があります。小学生の時から支援(しえん)学級と通常(つうじょう)学級の二つのクラスで授業(じゅぎょう)を受けてきました。

 小学校低学年の頃は、登校して教室に入っても何をすればいいか分からず、お母さんと一緒(いっしょ)に教科書やランドセルを片付(かたづ)けていました。また体幹(たいかん)も弱く、ランドセルを背負(せお)ったまま靴(くつ)を履(は)くことが難(むずか)しかったそうです。

 すると、周りの子たちからは「そんなこともできないの」「邪魔(じゃま)、どいて」など心ない言葉を何度も浴びせられました。「とても悲しかったです」と当時を振(ふ)り返ります。

 そんな中で前向きになったきっかけは、小学3年生の時のある言葉でした。友達とのトラブルで悩(なや)んでいた時に、カウンセリングを受けていた心理士(しんりし)の先生から「渚ちゃんはそのままでいいんだよ」と声をかけられたのです。「私(わたし)の気持ちを分かって、ずっと味方でいてくれたのが何よりうれしかった」。自分のことを少しずつ知って、「苦手なことがあっても、それも私だ」と受け入れられるようになりました。

 昔はじっとしていられず逃(に)げ出してしまっていた学校行事も、今では通常学級のクラスメートと一緒に楽しめるようになりました。特に初めての合唱コンクールは、「ずっと歌っていたかった」と言うすてきな思い出です。

 「人はそれぞれ違(ちが)うからこそ輝く。自分らしく生きられなくてつらい思いをしていても、ありのままの自分を好きでいてくれる人はきっといる」。それが主張で一番伝えたかったメッセージです。

 今は一緒に遊んでくれる友人や、困(こま)ったときに支(ささ)えてくれる両親に囲(かこ)まれながら、声優(せいゆう)という夢(ゆめ)に向かって進んでいます。「私は自分のことを不幸だと思ったことはありません」。キラキラした笑顔で話す金家さんの個性(こせい)は、輝き続けています。