
新中学3年生のみなさん、そして保護者のみなさん、いよいよ高校受験の1年がスタートしました。本格的な受験対策までは少し時間がありますが、兵庫県の入試制度はやや複雑です。早い段階で仕組みを理解しておくことで、志望校選びや受験戦略をスムーズに立てることができます。また近年は、私立高校の授業料無償化や公立高校の定員割れなど、受験環境も大きく変化しています。今回は、兵庫県の高校入試制度とその現状について整理してお伝えします。
◆学校・学科と学区、入試形態の関係を知ろう

(1)学区とは
兵庫県では公立高校普通科・総合学科に5つの学区を設置しています。各学区のエリアは大まかに下記の通りです。
第1学区:神戸・芦屋・淡路
第2学区:阪神・三田・丹波
第3学区:東播磨・中播磨・北播磨
第4学区:西播磨
第5学区:但馬
ここで一つ気になるのは、「別の学区の学校も受験できるか?」ということです。
基本は学区内の高校しか受験できませんが、例外もあります。
例えば、学区の境界線に居住している生徒は、別の学区も一部受験が可能です。具体例として、淡路市は第1学区ですが、隣接区域として明石市(第3学区)の高校を受験できます。
また隣接区域に該当しない場合でも、単位制の推薦入試や総合学科の推薦入試は県下全域から受験が可能です。
もちろん普通科・総合学科以外の、工業科、商業科など専門性の高い学科などについては、県下全域が対象です(明石商業の商業科を除く)。
これらの学科に興味がある場合は、志願が可能か、事前に調べておいた方が良いでしょう。
(2)入試形態について(推薦入試・特色選抜)
推薦入試と特色選抜は2月の同じ日に実施されます。合格すれば必ず入学となり、3月の一般入試は受けられませんので、注意しましょう。
推薦入試と特色選抜は似ているようで、少し違います。
推薦入試は、商業高校や工業高校、理数科、国際科などの専門学科を中心に実施されます。受験には中学校長の推薦が必要で、(1)で解説した通り、学区に関係なく志願することが可能です。
一方、特色選抜は普通科の中の特色あるコース(類型)で実施されます。こちらは中学校長の推薦は不要ですが、志願できるのは学区内の高校に限られます。
これらの入試を受ける場合、秋ごろには中学校へ事前提出書類を提出する必要があります。そのため、「なぜその高校なのか」「何を学びたいのか」「将来にどうつなげるのか」といった志望理由を、早めに明確にしておくことが重要です。
「早く合格を決めたい」という理由だけで受験することは避けましょう。
試験内容は学校ごとに異なり、面接・小論文のみの学校もあれば、学科試験を課す学校もあります。また、合否の判定基準は公表されていません。
不確かな情報に左右されず、オープンハイスクールなどに参加して、正確な情報を自分で確認することが大切です。
なお、普通科(単位制などを除く)では推薦入試は実施されていません。
(3)入試形態について(一般入試)

3月に実施される一般入試には、「複数志願選抜」と「単独選抜」の2種類があります。
複数志願選抜は、第一志望と第二志望の二つの高校に出願でき、第一志望には「加算点」(20~30点、学区によって異なる)があるのが特徴です。対象は、普通科・総合学科・単位制の高校です。
第二志望が選べる複数志願選抜ですが、第二志望を選択しない生徒もいます。第1志望が不合格だった場合、第2志望に合格すると辞退ができず、私立高校へ進学できなくなるためです。この点は事前によく検討しておきましょう。
単独選抜は商業科や工業科など専門性の高い学科を設置している高校となります。こちらは保護者世代の受験のイメージと全く同じです。

一般入試では、試験問題は全員共通です。また合否の判定は、内申点(通知表の評定)を250点満点換算し、これに当日の5教科の合計点(250点満点に換算)を加えた合計で判定されます。
内申点の計算式は、音楽、美術、保健体育、技術・家庭の副教科の比重が、5教科に比べて高いことが兵庫県入試制度の特徴です。兵庫統一模試ではこの複数志願選抜のシステムに完全に対応した合否判定を行っていますので、不安な方はぜひ受験してみてください。
◆近年の動向をおさらい
令和8年度入試から、出願や合否発表がインターネットで行われるようになりました。推薦入試と特色選抜の合否発表では混乱があり、一般入試の発表が危ぶまれていました。しかしシステムの不具合が解消されスムーズに合否が確認されたようなので、次年度以降は安定して運用されていくと考えられます。
また、公立高校の一般入試では、平均倍率が初めて1倍を下回り、0.97倍となりました。ただし、定員割れであっても第2志望からの流入があるため、必ず合格できるわけではありません。最後まで気を抜かず努力することが大切です。
公立高校の定員割れの背景には、私立高校の授業料無償化の影響が大きいとされています。
私立高校は授業料が45万7200円支給されることとなり、私立高校を選択する生徒が増えました。ただし多くの私立高校はそもそもの授業料が支給金額より高いところもあり(公立高校は授業料の全額が支給されているので授業料は0円です)、また授業料以外の費用が公立高校よりかなり高額なところが多いです。
そのあたりも十分に調べて受験校を決定しないと、入学後に「こんなに費用が掛かるの⁉」となることがあるのでご注意ください。
「学費が安いから」ではなく、「教育内容が自分に合っているか」という視点で進学先を選ぶことが重要です。
◆合格のイメージを膨らませて

ここまで、兵庫県の公立高校入試制度を中心に解説してきました。
最後に、漫画「葬送のフリーレン」の中に「魔法の世界ではイメージできないものは実現できない」というセリフがあります。
私は現実の世界も同様だと思います。私の教え子で周囲が奇跡だという合格を成し遂げた生徒も、本人は周囲の心配をよそに「必ず合格する!」というイメージをもって日々努力していました。
偏差値や周囲の意見も大切ですが、それより本人の「この学校に行きたい」という気持ちが原動力になります。目標が定まれば、人は自然と努力できるものです。
保護者のみなさんも、来年の今頃、お子さんが第一志望校の制服を着て通学している姿を思い描きながら、この1年を支えてあげてください。
この1年が、実り多きものとなることを心より願っています。
<執筆者>株式会社創造学園常務取締役・手嶋孝紀
兵庫県を中心に100教室以上を展開する株式会社創造学園の総合進学塾エディック・創造学園にて教室責任者、学区責任者、研修、教務など、あらゆる部署を歴任し、教育現場から経営まで幅広い経験を積む。現在は常務取締役として教務のみならず会社全体を統括しながらも、「教務のトップである限り現場を離れない」という信念を貫いている。どれほど多忙でも教壇に立ち、生徒と共に学ぶ姿勢を崩さない。その現場での気づきが、新しい教材や指導法の開発へとつながり、創造学園全体の教育力向上を牽引している。
























