プールで「鼻をつくような独特の匂い」が気になったことはありますか? ※画像はイメージです(tayukaishi/stock.adobe.com)
プールで「鼻をつくような独特の匂い」が気になったことはありますか? ※画像はイメージです(tayukaishi/stock.adobe.com)

プールに入ると鼻につく、あのツンとした匂い。いわゆる「カルキ臭」と呼ばれる刺激臭は、誰もが知っているだろう。カルキは、主にプールの消毒などに使われる次亜塩素酸カルシウムのことで、塩素の一種。だからカルキ臭=塩素の匂いと思われがちだが、匂いの正体は塩素そのものではないという。

■プールの塩素濃度は水道水とほぼ同じ

プールの水を清潔に保つためには、浄化設備で不純物を濾過することと併せて、殺菌のために塩素の一種である次亜塩素酸カルシウムが投入されている。そのため、プールでツンと鼻をつく匂いを塩素の匂いだと思っている人が多いのではないだろうか。

プールの衛生基準は、厚生労働省の「遊泳用プールの衛生基準」や文部科学省の「学校環境衛生管理マニュアル」にある「水泳プールに係る学校環境衛生基準」によって定められている。残留塩素濃度、pH値、濁度、総トリハロメタンなどの項目があって、残留塩素はいずれの基準でも0.4mg/L以上~1.0mg/L以下が望ましいとされている。これは、0.1mg/L以上1.0mg/L以下に管理されている水道水と大きな差はないのだとか。また0.4mg/L以下だと、匂いはほとんど感じないそうだ。

「じゃあ、あの匂いはどこから発生しているの?」という疑問が湧く。水道水に存在しない何かがプールにあるはずだ。

■匂いの正体は塩素とアンモニアが反応してできるクロラミン

結論からいうと匂いの正体は、塩素とアンモニアが反応して生成する「クロラミン」という物質だ。

公益社団法人「日本水道協会」によると、アンモニアと塩素の反応では「モノクロラミン」「ジクロラミン」「トリクロラミン」の3種類の物質が生成されるという。

また、除菌用品を取り扱うココチプラス株式会社によると、「3種類のクロラミンそれぞれに匂いを発しています。中でも、一定量当たりの匂いはトリクロラミンがいちばん強いため、いわゆるプールの匂いは、トリクロラミンの匂いです」とのこと。

一方、アンモニアはどこから来るのかといえば、人間である。汗と尿に含まれるアンモニアが塩素と反応しているのだ。人間は水の中でも汗をかいていると言われている。

大阪市教育委員会によると「プール水の衛生を保つには塩素が欠かせません。プールを衛生的に安心して利用するには、マナーが大切です。プールに入る前に、必ずトイレを済ませ、シャワーできれいな身体にしておくことです」

ちなみに、前出のココチプラスによれば、プールに入ったとき目などの粘膜にチクチクとした刺激を感じるのは、クロラミンのせいではなく、塩素による刺激だそうだ。

病院の救命救急センター長を務めるある医師は「アンモニアの出どころが気になるし、衛生上の観点からも、プールで泳いだあとは綺麗な水で全身を十分に洗うのが望ましい」とも説明している。

【参考】
▽遊泳用プールの衛生基準(厚生労働省)
▽学校環境衛生管理マニュアル(文部科学省)
▽ココチプラス株式会社

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)