大学受験を控えた家庭にとって、1月から2月はまさに「戦場」です。子どもの緊張が家族全体に伝わり、親も細心の注意を払う日々。体調管理や受験スケジュールの確認に追われながら、願書の準備や受験料の振り込みなど、やるべきことは尽きません。そんな中、Rさん(東京都在住・50代)のもとに、一通のLINEが届きました。
送り主は、ママ友の一人。彼女の子どもは指定校推薦で早々に進学が決まっており、受験のプレッシャーとは無縁の生活を送っています。「受験組のママたちにエールを送りたい!」という善意なのか、ただの「暇つぶし」なのかは分かりません。しかし、その内容は、Rさんにとっては、とにかく「ありがた迷惑」なものでした。
■そんな情報、もう知ってるから
ちょうど大学入学共通テストを終えた時期でした。Rさんの子どもが希望する国立大学では、二段階選抜を実施していて、一次試験である共通テストの成績が基準を超えていないと、次の二次試験に進めないという、いわゆる“足切り”があります。“足切り”の点数が発表されるのはまだ少し先です。
そんな状況のなか、ママ友から送られてきたのは、受験情報を次々と並べたメッセージでした。
「共通テストの今年の平均点、高かったみたいね!」
「うちの高校だけの平均は〇〇%だったんだって」
「Rさんちの子どもは優秀だから、きっと高得点よね!」
「△△大学の足切りライン、今年は〇〇%らしいよ!」
いやいや、そんな情報…Rさんだって知っていますから。受験生の親なら、学校や塾と相談しながら必死に情報収集しているもの。その程度の情報、今さらドヤ顔で教えてもらうようなことではありません。
しかも、彼女からは「校内のみんなの結果が楽しみ!」「みんな希望の大学に進学できますように!」といった、まるで“高みの見物”かのようなメッセージも続々届きます。そんなの余計なプレッシャーがかかるだけです。
「受験生を持つ家庭の緊張感を知っているなら、今はそっとしておいてくれないかな?」…Rさんはそう思わずにはいられませんでした。
■極めつけは「運転免許の話」
その後もなぜかLINEのやりとりは終わりません。話題はなぜか、彼女の子どもが通い始めた自動車教習所の話に。
「2月から4月って教習所が混むからスムーズに進まなくて~」
「ラグビー部の××くんも行き始めたんだよ」
「免許取るのって、お金も時間かかるから本当に大変!試験一発で受かるかな?」
…ごめん、そんなこと、今聞いて何の役に立つの? マジでどうでもいい!
Rさんは、スマホを見つめながら深いため息をつきました。子どもの受験が目前に迫る中、合格した人のぜいたくな悩みに付き合っている余裕なんてないのです。「学業優秀で指定校推薦取ったのに、運転免許試験なんか落ちる奴いないでしょ!」心の中で叫ばずにはいられませんでした。
■受験組と推薦組、温度差にうんざり
受験生の家庭にとって、この時期は息をつめるような日々が続きます。健康管理、出願手続き、試験当日のスケジュール調整…。すべてが緊張の連続です。一方で、指定校推薦組の親は早々に受験から解放され、時間を持て余しているのかもしれません。話し相手のいない“推薦組のママ”が、寂しさもあってついLINEに手を伸ばして近況報告したくなるのの分からなくもありません。でも、タイミングが悪すぎます! ほかを当たってください!…Rさんは、心の底からそう願っています。
あなたの身近にも、受験生を支える保護者や家族はいませんか? 何気ない一言が、相手の負担になることもあります。距離を置いて、見守ることも大切かもしれません。
(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)