古代エジプトで作られたベッドがSNS上で大きな注目を集めている。
「3000年以上前の古代エジプトのベッド。未盗掘墓から出てきたので極めて状態が良いです。 」
と件のベッドを紹介したのは早稲田大学會津八一記念博物館助手の有村元春さん(@011235Moto)。
木製の枠に籐のような素材で網をはったこのベッド。デザイン性のみならず使用者の快適性にも配慮したことがうかがわれ、保存の良さも相まって見る者を驚かせる。有村さんにお話を聞いた。
ーー展示をご覧になった経緯は?
有村:私は、新王国時代と呼ばれる時代の古代エジプトと当時の東地中海周辺地域との交易を専門に研究しております。その参考になる遺物について調べることを主な目的として、エジプト外では最大の古代エジプト専門博物館、トリノのエジプト博物館を訪れました。この博物館の目玉の一つが、「カーとメリトの墓」や「建築家カーの墓」という名称で知られる新王国時代のお墓の副葬品です。このお墓は今から3400年ほど前のもので、副葬品の中に非常に残りのよい家具が多数存在することで有名です。そのため、一度は実物を見てみたいと思っておりました。今回トリノを訪れることができたため、この展示も合わせて見たという経緯になります。
ーー歴史の重みを感じます。
有村:どれだけ残りがよいかは知っていたものの、いざ実物の数々を見ると圧倒されました。この家具を製作していた古代の職人の姿や、それを使っていた人々の姿がそこに思い浮かぶような不思議な感覚となりました。そして、こうした遺物を何千年も後の時代まできれいに残したエジプトの環境にもあらためて驚かされました。
ーー他にも印象的だった展示は?
有村:同じお墓から出てきた、いわゆる「死者の書」と呼ばれる葬祭文書が印象的でした。こちらも残存状況が非常によく、その長さは14メートルに及びます。びっしりと文字が記され、ところどころに図像が描かれているパピルスでして、その筆致の美しさにしばし見入ってしまいました。
ーー投稿に大きな反響がありました。
有村:思ってもみなかった規模の反響があり、ただただ驚くばかりです。あまりにも残りがいいため、「信じられない」「複製品では?」というコメントも何件かいただきました。ちゃんと本物なのですが、にわかには信じがたいという気持ちは私もよく理解できます。こういった驚くほどきれいに残っている遺物、そして現代の製品と見紛うほどの技術を駆使して作られている遺物は、エジプトでは多く発見されています。その一端を多くの方々に見ていただくことができてよかったです。
◇ ◇
SNSユーザー達から
「現代にも通じる機能性とデザインですね。 とても、3000年以上前とは信じられません!」
「復元したものかと見まごうばかり。今でも使うことができそうです。」
「通気性は昔から大切にされてたんだなぁ」
「ベットの脚がネコチャンの足みたいでかわいい 」
「キレイに残ってるのに驚きです! 左の高さがあるのは枕かな?と古代エジプトの髪型を検索したら、なんと貴婦人はパーマをしてたらしく、髪型が崩れないよな枕が必要だったのかも?」
など数々の驚きの声が寄せられた今回の投稿。有村さんのお話にもあったが、エジプト博物館はイタリア・トリノにある古代エジプト専門の博物館でエジプト・カイロにあるエジプト考古学博物館に次ぐ規模の古代エジプト美術を収蔵している。ご興味ある方はぜひ足を運んでいただきたい。
なお今回の話題を提供してくれた有村さんは現在、昨年実施して好評の声を多数いただいたNHKカルチャー講座のオンデマンド版「【プレ講座】『海の民』の謎に迫る~最新の研究成果から探る『海の民』の実像~」を実施中。紀元前1200年頃に東地中海を荒らしまわったとされる海の民について詳しく解説しているので歴史好きの方は要チェックだ。
(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)