海外でのレンタルWiFi事業をはじめ、新型コロナウイルス禍に自宅でPCR検査をできるようにしたり、不妊治療専門の「にしたんARTクリニック」を運営を支援したり…。数々の事業を成功させてきたエクスコムグローバルの西村誠司社長(54)。次は、どのような分野を狙っているのか-。事業展望を聞いた。
■アメリカの最先端治療があったから娘に出会えた
----2022年6月から不妊治療事業に参入されました。経緯を教えてください。
「長女が2015年、不妊治療の末に生まれたんです。当時、僕ら夫婦は40歳を超えていて、アメリカの最先端の遺伝子検査や治療があって娘に出会えたんです。弟も不妊治療をしていたので、日本の不妊治療の状況を聞く限り、『何でアメリカだと普通に選択できる着床前診断が日本ではできないんだろう』って疑問を感じたんです。日本に帰国することになったら、幅広くみんなに届けたいなと思って始めました」
----その年の4月から、人工受精などの「一般不妊治療」、体外受精・顕微授精等の「生殖補助医療」が新たに保険適用されました。保険適用は見据えていましたか。
「自由診療でやろうと思っていたので、保険適用と重なったのはたまたまです。着床前診断については、いろんな意見がありましたが…。僕がやってきたことは、治療を受ける人たちからすると救世主的な存在だったので。今年で3年弱で、不妊治療のマーケティングのノウハウが積み上がってきました」
■AIは、思っている以上に早く入って来る
----次に取り組もうと考えている分野はありますか。
「医療全般をやっていくかもしれないですね。AIが確実に、思っている以上に早く入って来ると思うんです。虎の尾を踏むことになるかもしれないんですが…。毎日、たくさんの方の治療をして臨床が積み上がっていく。その臨床数を一番吸収して活用できるのがAIの領域だと思うんです。僕はもともとアクセンチュア出身で、アクセンチュアはITとかコンサルに強いんですけど。彼らも一番フォーカスしているのは、AIなんです。僕らが思っている以上にAIの世界ってすごくて。例えば、4人でオンラインで話している中にAIのフェイクを入れても、実在する本人だと間違うくらいのものが出来上がっているんですよ」
----すごいですね。具体的に診療はどのように取り入れていきたいですか。
「にしたんARTクリニックの中で診療科関係なく、AIテクノロジーを入れた診察をできればいいなと。とてつもない知見が蓄積されたAIドクターが出てくると、普通のドクターはオペだけをする世界になってくる。Snow Manの目黒蓮くんドクターに見てほしかったら、本人が話しているように『こんにちは、どうしましたか?』って出て来るような世界ですよね。自分自身と瓜二つのドクターが出てきても面白いですね。実在の人間とほとんど変わらず、僕らが培った臨床経験とか全てを学習させたAIドクターなので、そこらへんのドクターより厚い知識で的確な診察をリアルにしてくれるっていう世界になると思います。そこをアクセンチュアと協力してできたらな、と。そしたら、過疎地などドクターが足りない問題も解決する。不妊も国の社会の課題でした。そういう社会問題を、テクノロジーで解決して社会に広げていくような事業をやりたいなと思っています」
(まいどなニュース・山脇 未菜美)