1995年の阪神・淡路大震災で閉鎖したボクシングジム「神戸拳闘会」(神戸市兵庫区)の元日本王者が、30年ぶりに古巣で練習に汗を流した。
8月12日、プロボクシング元日本スーパーフェザー級王者、鈴木敏和さん(56)=神戸市北区出身=は「失礼します」と頭を下げ、板張りのジムに足を踏み入れた。30年前に閉鎖した当時のまま保存されているリングやサンドバッグ、腹筋を鍛えるアブローラーなどのトレーニング機器に手を触れ、「何もかも昔のまま。タイムスリップしたみたい」と懐かしんだ。
中高時代に神戸拳闘会練習生だった坪井将誉さん(53)とともにシャドーボクシングや縄跳び、サンドバッグをたたくと、夏の熱気に包まれたジムで汗が噴き出した。「こんなに汗をかいたのは30年ぶり。震災後は練習場所を探すのも大変だった」
鈴木敏和さんが所属した1931年創設の老舗ジム「神戸拳闘会」は、阪神・淡路大震災で入っていたビルが半壊した。建物に強い衝撃がかかるボクシングジムを続けることは難しく、鈴木さんはタイトル防衛戦に向けた練習拠点を失った。練習場所を転々として迎えた日本王座防衛戦で判定負けし、現役を引退した。
神戸拳闘会は初代会長の遺族が当時のジムの姿を保存してきた。鈴木さんは「感謝です。青春を過ごした場所に帰ってこられた」と礼を述べた。
(まいどなニュース・伊藤 大介)