長崎市内のオランダ坂近くにあるカフェ&バー「Carpe Diem Cafe」には、ひらがな一文字が名前の三毛の看板猫がいる。「つ」(メス、8歳)は、店主の水口知宏さん、ママの井上里実さん夫婦の飼い猫で、店ではお客さんのアイドル的存在だ。「つ」との出会いや、名前の意味、人気ぶりなどについて、二人に聞いた。
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知宏さん 8年前、自宅の庭に餌をもらいにやってきていた野良の母猫が3匹の子どもを産み、連れてきました。2匹は里親を探して引き取ってもらったのですが、残る1匹は引き取り手が見つかりませんでした。たぶんカラスに突かれたんでしょう。傷だらけで、皮膚病もひどく、そのままにしていたら、あと半日で死んでいたのではというくらい、衰弱していたんです。
知宏さん それで保護して、当時の店の片隅で世話をし始めました。病院に行き、ケガの手当てや皮膚の治療もしてもらいました。当初は僕の帽子の中で寝ていて、トイレやご飯のとき以外はずっと帽子の中にいました。ケガが治り、元気になったのは2ヶ月後くらい。当初は飼うつもりはなく、里親を探そうと思っていたのですが、世話するうちに情が移ってしまい、お客さんからも可愛がられていたので、そのままうちの子になったんです。
知宏さん 名前が「つ」という、ひらがな一文字なので「珍しいね」「なにか意味があるの?」ってよく言われます。「つ」は長崎弁で「かさぶた」のこと。保護したころ、治りかけの傷がかさぶたになっていたので、仮にそう呼んでたのですが、お客さんの間では「つーちゃん」と呼ばれて定着したので、そのままになりました。
里実さん つが来て約1年後に、現在の店に移転したのですが、この物件を借りられたのも、つのおかげなんですよ。もともとここは貸店舗ではなく、貸すつもりはなかったみたいなんですけど、当時、つによく会いにきてくれていた常連さんの一人が「ここは立地がいいから、オーナーさんに電話してみたら」と勧めてくれて。それで連絡したのがきっかけで、貸してくれることになったんです。もし、つがいなければ、こうしてここで店をしていなかったかもしれません。
里実さん この子は賢いんですよ。猫が苦手な人を察知するのが早く、猫嫌いな人には近づきません。先日来られた団体の方々は、みなさん猫好きだったので、たくさん可愛がられていました。インバウンドの方々からも「She’s so cute!」などと、つは大人気です。
里実さん 常連さんの中には、来店したときにあげるチュールをキープしてる方もいます(笑)。近くに女子大があるので、学生たちが店の前を通るとき、つは窓際のカウンターに座って通学を見守っています。「おはよう」「また明日ね」って学生たちが声をかけてくれるのが聞こえてきます。「この子、つっていう名前なんですよ」と、観光の方にうちの店を勧めてくれることもあり、嬉しいです。
里実さん 長崎は尻尾が曲がった「尾曲がり猫」が有名ですが、つもかぎ尻尾です。「尾曲がり猫は幸運をひっかけてきてくれるよ」と教えてくれた方がいましたが、まさにその通り。「猫がいると聞いて来ました」という方も多く、この子のおかげで数えきれないほどの出会いがありました。まさかこんなに幸せを運んできてくれるとは、当初は思ってもいなかったですし、つと一緒にいると心が落ち着くので、つには本当に感謝の日々なんです。
【店名】カフェ&バー「Carpe Diem Cafe」
【住所】長崎市東山手町1-4 第2オーチ東山手1F
【インスタグラム】@mizu_carpe_diem_cafe
(まいどなニュース特約・西松 宏)