AI見守りロボの導入で、遠距離介護も安心 ※画像はAIで作成したイメージです(Odin AI/stock.adobe.com/)
AI見守りロボの導入で、遠距離介護も安心 ※画像はAIで作成したイメージです(Odin AI/stock.adobe.com/)

「最近よく眠れるようになったのよ」--遠距離介護を続ける彩さん(48)が久しぶりにほっと息をつきました。きっかけは、母・絹子さん(78)宅に導入した“AI見守りロボ”です。転倒を検知すると即座にスマートフォンへ通知が届き、スピーカー越しに声かけもできます。3カ月前までは夜中に「また倒れてないか」と何度も電話を入れていましたが、いまは通知がゼロなら安心して眠れるといいます。

一方で、同じ機種を購入したものの、玄関のセンサーが開閉のたびに通知を送るのでスマートフォンが鳴りやまなかったり、カメラ付きのロボットが居間に鎮座したことで、「監視されている」とストレスを感じてしまったりと、うまくいかなかった事例も多くみられます。

実は、見守りロボ導入の成否は、「目的の一本化」「プライバシー設定」「運用後の対話」の3点でほぼ決まります。詳しく見ていきましょう。

■見守りロボ導入のための3つのポイント

▽目的を絞る

まず目的です。彩さんは「夜間の転倒さえ分かればいい」と機能を絞り、カメラはオフ、通知先はご自身だけに限定しました。通知は週に数回、誤報もほとんどなく、母娘の電話時間は“安否確認”から“今日の晩ごはん報告”へと変わりました。

欲張っていろいろな機能をつけたり、すべての部屋を監視したりしようとした結果、通知が1日に何百件も届いてしまい、混乱を招いたり家族との関係がぎくしゃくしたりするケースもあります。まずは一つの困りごとに集中し、追加機能はその後で考えるべきでしょう。

▽プライバシーへの配慮

次にプライバシー設定です。彩さんは導入前に母親と一緒にデモ動画を見て、「カメラを切って音声だけ」に合意しました。見守られる側が設定を選べたことで、母親はロボットを“便利な呼び鈴”と受け入れました。家族への説明を怠ると、「勝手に監視をされた」という不信感につながる場合もあるので、見守られる側との丁寧な相談が重要です。

▽導入後の対話

最後に運用後の対話です。彩さんは毎週ロボットのアプリに表示される「歩数ログ」を母親と一緒に見て、「今日はよく歩けたね」と雑談のネタにしています。機械が二人の会話を増やす媒介になったわけです。導入後に不具合や誤報が続いても「忙しい」などの理由で放置してしまうと、見守られる側の不満が募る結果を招いてしまいます。

■費用の目安と導入の確認事項

もちろんコストも気になるところです。

価格は「自費レンタル」と「介護保険利用時の自己負担」を分けて考えましょう。自費レンタルの目安は、離床・転倒センサーで月3000~5000円、徘徊アラート等の複合型で月4500~6500円程度。いっぽう、介護保険の福祉用具貸与に該当すれば、利用者負担は所得に応じ1~3割になります。対象となるのは「徘徊感知器」「離床センサー」などの種目です。「映像監視が主目的の見守りカメラ」は介護保険の対象外であり、自費レンタル扱いになります。ですが、今後の技術進展や政策変化によって、拡大される可能性はあります。

対象種目・該当製品は全国共通の情報に基づき、運用判断は市区町村が行います。また、レンタルは「月額契約」が基本です。しかし、実際には要介護度の変更や生活の状況の変化などで機器を入れ替える場合があるため、年ごとの見直しを前提に費用をシミュレーションする方が現実的です。導入前にケアマネ・福祉用具専門相談員や介護保険課へ確認し、機器レンタル料/通信費/駆けつけ等のサービス料/設置費まで含めた総費用を家計に反映させて検討すると、後悔が少なくなります。

■導入成功のためのチェックポイント

これまで挙げてきたこと以外に、導入を成功させるポイントとして「誤報率や死角をメーカーに質問し、納得してから契約」します。そのうえで「導入後は月に一度、家族と本人で“使い心地レビュー”を実施」しましょう。

彩さんの母親は最近、ロボットに向かって「おやすみ」と話しかけるようになったといいます。「母が安心して眠れるなら、私もスマートフォンを気にせず眠れる」。機械と人間の距離がちょうどいいところで落ち着いた証拠でしょう。

テクノロジーは魔法の杖ではありませんが、使い方次第で大きな安心をもたらす道具になります。導入を迷っているなら、まずはご家族で「何を一番解決したい?」と話し合ってほしいと願っています。目的と合意を整えておけば、見守りロボは“家族のパートナー”へと姿を変えるはずです。

【監修】阿部里美(あべ・さとみ)社会福祉士・宅地建物取引士 B型作業所「ぺんぎんクリエイツ」にて職業指導員として、福祉の現場に立ちながらディレクションを行う。地域福祉やまちづくりの分野においても実務経験を有する。異色の経歴として、インタビュー専門ライター、現代美術館にて英語・韓国語を用いたギャラリーガイドなど。

(まいどなニュース/もくもくライターズ)