この子の名前はきゅーちゃん(ぬこー様ちゃんさん提供)
この子の名前はきゅーちゃん(ぬこー様ちゃんさん提供)

子どもの頃のペットの思い出は誰にとっても特別なものです。X(旧Twitter)で漫画を投稿しているぬこー様ちゃんさんも、そんな幼少期の記憶を描いた作品『【閲覧注意】ともだちに不死鳥を逃がされた話』を投稿しています。

物語は幼いぬこー様ちゃんさんが母にペットを飼いたいとお願いする場面から始まります。最初は「ダメ」と断られてしまいますが、落ち込むぬこー様ちゃんさんの姿を見かねた母は、大家さんから鳥を譲り受けてくれました。小鳥に『きゅーちゃん』と名付け、大切にしようと心に誓います。

ところが、次の日訪ねてきた友人がうっかり鳥籠を開けてしまい、きゅーちゃんを逃がしてしまいます。ぬこー様ちゃんさんは悲しみに暮れ、数日間眠れないほど沈んでしまいました。そんな中、母が「きゅーちゃんが帰ってきたよ」と鳥籠を見せてくれます。

しかし、その鳥は以前と違う色。困惑していると、母は「長旅で疲れて色が変わった」と説明し、ぬこー様ちゃんさんも素直に信じて喜びました。

きゅーちゃんが戻ってきたことで友人を許す気持ちになれたぬこー様ちゃんさん。その友人はそもそも鳥を逃がしたことを忘れてしまった様子を見せます。ぬこー様ちゃんさんは幼心に「人は自分に都合の悪いことを忘れるものなんだ」と悟ったのでした。

その後もきゅーちゃんの色はたびたび変わり、母が落ち込む自分を慰めるために別の鳥を連れてきてくれたのだと、しだいに気づくようになったのです。ある日大家さんのところへ鳥を返しに行くことになり、そこには以前、きゅーちゃんと言って連れてきていた鳥たちの姿もありました。

それから35年の時を経て、大人になったぬこー様ちゃんさんは、母にこの出来事を改めて話しました。すると母は「覚えていない」と笑いながら答えたといいます。母の優しい嘘に守られて過ごした日々は、鮮やかな記憶となって今も胸に残っているのです。同作について作者のぬこー様ちゃんさんに話を聞きました。

■印象深い最初のパートナー「きゅーちゃん」との思い出

ーきゅーちゃんの思い出は、今でも鮮明でしょうか?

鮮明に覚えてます。最初のパートナーだったので、特に印象深い存在です。

ー当時「鳥の色が変わった」と言われて、疑う気持ちは全くなかったのでしょうか?

当時はASDの兆候があり、人の嘘を見抜くことがあまり得意ではありませんでした。母の言葉もそのまま信じてしまったんです。

ーこの話を描こうと思ったきっかけを。

実家に帰ったときにこの話を母としたのですが、そのとき母がまさに漫画のオチと同じことを言ったんです。その瞬間「この話を描きたい」と思い、作品にしました。

(海川 まこと/漫画収集家)