北海道の農園に現れる野生のエゾユキウサギが、ブルーベリーを食べながら“農園のお掃除役”としても活躍している動画がXに投稿され、16万件の「いいね」を集めるなど注目を集めています。暑さでスズメバチが増える中、販売対象外の実を食べることで害虫発生を防ぎ、農園にとって思わぬ助けになっているのです。
投稿したのは、北海道美瑛町でハスカップやブルーベリーを育てる「びえいハスカップファーム(@haskapfarm)」。投稿には「今年は北海道も異常な暑さでスズメバチが多いので、販売しない下の方のブルーベリーを食べて掃除してくれてありがとうございます」との言葉が添えられました。「季節バイトに来てくれるんだ」「ブルーベリーはうさぎのお墨付き」などのコメントが寄せられています。
エゾユキウサギは北海道に生息する野ウサギ。冬は真っ白、夏は茶色へと毛色が変わるのが特徴で、草本や果実などを食べる温和な草食動物です。
投稿主さんが初めてエゾユキウサギを意識するようになったのは10年以上前。「まだ若いブルーベリーの木が食べられなければいいな、と心配した記憶があります」と心配したそうです。しかし、ブルーベリーは背丈1~2mほどの低木で、泥はねや傷みのリスクがある地表近くの実は収穫対象外。同農園ではもともと下の実は採らない運用でした。
今年は北海道が記録的な猛暑に見舞われ、農園でもスズメバチが増加。熟した果実を放置するとスズメバチを呼び寄せますが、下枝の実をウサギが食べることで落果を防ぎ、誘因源を減らせると気づいたといいます。そこで「小さくてかわいい従業員」と呼ぶようになりました。
「農園には一年中、数体のエゾユキウサギがいます。特定の時期だけ現れるわけではありません」と投稿主さん。記録的な暑さの中でも、エゾユキウサギたちは例年通り元気。「日中は木陰で休むことが多いですが、変わらず走り回っています」と話します。
投稿には「労働力不足の我が家では助かります」との言葉も。背景には、野生動物との共生への思いがあります。
「野生のうさぎは昔から害獣として扱われてきましたが、その固定観念を一度取っ払い、人間の対応や環境次第で益獣になり得る可能性もあります。そんな視点を持つきっかけになればうれしいです」
農園にはキタキツネやエゾタヌキ、アライグマも立ち寄りますが、すぐに去ってしまうとのこと。「農園は害獣フェンスで囲っているため居座る必要がないのでしょう」と説明します。
なお、農園では果実の直接販売は行っておらず、農園内への立ち入りや見学、ウサギの撮影も受け付けていません。「SNSに投稿される写真や発信を通じて、遠くからその姿を楽しんでほしい」と呼びかけています。