1着で130リットルのスーツケースを埋めるドレス/サリエさん(@hummel827)提供
1着で130リットルのスーツケースを埋めるドレス/サリエさん(@hummel827)提供

人気アニメ「美少女戦士セーラームーン」に登場するプリンセス・セレニティのドレスを、一個人が再現--。その投稿がSNSで「まるでプロの舞台衣装」だと驚きの声と共に拡散されています。

投稿したのは、衣装制作者のサリエさん(@hummel827)。長年の憧れを形にしたという2種類のドレスは、1着が重さ10キロ、もう1着は130リットルのスーツケースを埋め尽くすという規格外のスケール。その圧巻のクオリティに、SNSでは合わせて1.4万件を超える「いいね」が集まり、「フワッとして重さを感じさせない見た目なのに10kg…」「本当に素敵です」と感嘆の声が相次いでいます。

今回サリエさんが制作したのは、原作版とミュージカル版、それぞれをイメージした2種類のセレニティドレス。どちらも圧倒的な作り込みが目を引きますが、その特徴は大きく異なります。

【原作版イメージ:130Lのスーツケースを埋めるドレス】

まず1着目は、裾にビーズをあしらった、幾重にも重なる純白の生地が美しいドレス。その最大の特徴は、130リットルの大型スーツケースを完全に埋め尽くすほどの圧倒的なボリューム感です。キャラクターが持つ、軽やかで優雅なシルエットが見事に再現されています。

【ミュージカル版イメージ:重さ10キロ超のドレス】

そして2着目は、豪華絢爛な装飾が施されたドレス。なぜこれほど重くなったのか、サリエさんはその理由をこう語ります。

「メイン生地と羽根部分にビーズ刺繍を施したことに加え、パニエ(スカートを膨らませる下着)に別の衣装をそのまま使ったことも要因です。自分が着るので軽量化を意識しなかったらこんなことになりました」(サリエさん)

特にこだわったという背中の羽根もビーズ素材で制作。「透け感があってドレス自体とも相性がいいので使って良かったです」と、その出来栄えに満足している様子でした。

さらに驚かされるのは、その創意工夫です。ミュージカル版ドレスの胸元を飾るきらびやかなパーツは、なんと既製品のアクセサリーを分解して制作されました。

「中央の丸いパーツはブローチで、上の白い丸はイヤリングを分解したもの、それ以外は全部ネックレスを使っています。取り付ける際に余分なところをカットするだけです」(サリエさん)

   ◇   ◇

これらのドレスは、サリエさんの長年の憧れから生まれたものでした。セレニティのドレスは「ドレスが好きになるきっかけの衣装」だったと語り、「もともと作りたかったのですがイメージに合う素材がなく、ようやく見つけたので制作しました」と、キャラクターへの深い愛情をのぞかせます。

制作期間は1着につき約3週間。サリエさんの高い衣装制作技術は、学生時代にコスプレに夢中になったことから始まり、ディズニーハロウィンでの仮装をきっかけにドレス作りへと発展した、長年の経験で培われたものです。

過去に最も大変だった作品として、ディズニー映画『アナと雪の女王』のエルサのドレスを挙げ、「色彩を統一するためにクリスタル部分は全部レジンで自作し、生地も全部染色しました」と語ります。

特に生地の染色には強いこだわりがあり、常に新しい技術に挑戦し続けているそうです。

制作のモチベーションは「好きなキャラクターであることはもちろんですが、使いたい素材ややってみたい制作方法が思い付いた時」だと語るサリエさん。

その創作への純粋な探求心が、多くの人を魅了する作品を生み出す原動力となっているようです。