絵を見ても内容が伝わってこないかるたがSNS上で大きな注目を集めている。
「絵札だけだと、どの昔話のじじいに何が起きたのかわからない『ろ』」
と一枚のかるたを紹介したのはイラストレーターの氷厘亭氷泉さん(@hyousen)。
牢屋の中で肩を抱いて震える昔話風の高齢男性…まったく検討つかないこともないのだが、たしかに具体的にどの昔話なのか問われると自信がない。
氷厘亭さんにお話を聞いた。
ーー古そうですがこのかるたは?
氷厘亭:先日、1950~1970年代ごろに発売されていた、昔話を題材にしたかるたをいろいろと入庫しました。これはそのうちの一つに含まれていた「ろ」の札(「ろうやにいれられたよくばりじいさん」)です。紙質が少し厚くなってるタイプでしたのでおそらく1960年代から1970年代ごろのものだと思われます。
ちなみにかるたは箱とセットで保管されていても、本体などに発行年が印刷されていることがほとんどありません。はっきりとした発売年がわからないことが多いのですが、紙質などである程度の年代を測ることが出来ます。1940~1950年代まではボール紙で厚めに作られていない、ただのぺらぺらな紙のことが多いです
ーー「ろ」の絵札をご覧になったご感想を。
氷厘亭:昔話が主題なのにおもしろい場面を絵札に採用してるなとストレートに感じました。
牢獄にぶち込まれてる場面が描かれてるだけなので、この欲ばりざいさんが、「鳥呑み爺」の悪いおじいさんなのか、「花咲か爺さん」の悪いおじいさんなのか、それともまた他の昔話の悪いおじいさんなのかあんまりハッキリしなかったのが残念ですが…。しかし、実際に他のかるたと比較をしてみると、「ろ」に牢獄の絵を描いているものは1940年代頃からあったようなのでおもしろいです。
別のセットにも、欲ばりじいさんが描かれたものがあったのですが、くらべてみると今回の「ろ」の絵札のキャラクターデザインは相当キャッチ-だったということがわかりました。
ーー「ろ」以外にも印象に残ったものがあれば教えてください。
氷厘亭:舌切雀のすずめたち(「そろってむかえるすずめたち」)もかわいかったのですが、鬼ヶ島のたからものを運搬してる犬と雉の絵(「えんやらえんやらつなをひき」)もかわいくてよかったです。
ーー投稿に対し大きな反響がありました。
氷厘亭:欲ばりじいさんが全然「極悪づら」に描かれてなかったおかげでイマジネーションが広がりやすかったのか、多くのみなさんが「ろ」の読み札を独自に考えてくれたのが面白かったですね。写真をあげた直後にいただいた紀伊国亭むじなさんの「ろうのおくから ばばあのこえ」の時点でかなり秀逸でした。
◇ ◇
SNSユーザー達から
「牢屋に老爺、なんつって…とか思ったらホントにそれだった(・ω・;)」
「牢屋に入って何したんでしょう?このおじじは?」
「ろうなぬしに かんけいをもとめられる いじわるじいさん」
「じじいとこのタイプの牢屋の組み合わせ、どうしてもノスタル爺が脳裏にチラつく」
など数々の驚きの声が寄せられた今回の反響。氷厘亭さんはnoteでも「かるたの『ろ』の字が牢獄だらけ」、「かるたの『ろ』の字が牢獄だらけ・続」という記事でこのかるたについて紹介している。ご興味ある方はぜひご覧いただきたい。
氷厘亭氷泉(こおりんてい・ひょうせん)さん関連情報
イラストレーター。妖怪をテーマにした著作多数。今年7月には妖怪たちの変遷をたどりながら各ジャンルの書籍を紹介した『妖怪ブックガイド600』(勉誠社)を上梓。
(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)