首都圏は高生産性ながらウェルビーイングが低く ※画像はイメージです(oka/stock.adobe.com)
首都圏は高生産性ながらウェルビーイングが低く ※画像はイメージです(oka/stock.adobe.com)

株式会社パーソル総合研究所(東京都港区)は、このほど47都道府県ごとに労働力不足や生産性、幸福度などをランキング形式で表し、地域の特性に基づいた8つのエリアのエリアにおける課題を整理した「ニッポンのはたらく地図2025」を発表しました。それによると、労働力や生産性に関する指標は都市圏が上位を占める一方、はたらく幸福・健康指標では、福井・沖縄などの地方圏が上位となり、経済的な強さを持つ地域ほど、個人のウェルビーイングとの両立が難しい傾向が浮かび上がりました。

調査は、全国の15~69歳の就業者男女3万6000人を対象として、2025年2月~3月の期間にインターネットで実施されました。

同レポートを作成するにあたり、47都道府県別のオープンデータと、同研究所が独自に行った「都道府県別 働き方と就業意識調査2025」のデータを組み合わせて、「労働力充足」「人材マッチング」「生産性」「女性活躍」「シニア活躍」「外国人活躍」「はたらく幸福」「はたらく健康」「はたらく柔軟性」の計9つの「はたらく」に関する指標を作成したといいます。

上記の指標を用いた「はたらく」に関するランキングを見ると、「労働力充足」「人材マッチング」「生産性」の労働力や生産性に関する指標では「東京」や「神奈川」などの都市圏が上位を占める一方、「はたらく幸福」「はたらく健康」では、「福井」「沖縄」などの地方圏が上位となり、経済的な強さを持つ地域ほど、個人のウェルビーイングとの両立が難しい傾向が浮かび上がりました。

また、上記指標の傾向を基に47都道府県を「過疎・高齢エリア」「ケア・インフラエリア」「自然・文化共生エリア」「地場産業エリア」「工業心臓部エリア」「中核都市エリア」「首都『東京』エリア」「南国『沖縄』エリア」の8つのエリア(※)に類型化して、各エリアごとの特徴と課題を調べたところ、以下のような結果となりました。
※エリア名は、それぞれの地域を構成する都道府県の産業構造や人口規模などの基礎情報を踏まえて命名。

<各エリアの特徴と課題の概要>

(1)過疎・高齢 エリア(青森、秋田、岩手、福島、高知)
労働市場は空洞化しており、「労働力充足」(43位)、「人材マッチング」(45位)、「生産性」(41位)など労働市場関連の指標は全国最低水準である一方、「女性活躍」(24位)、「シニア活躍」(29位)は比較的良好であり、地域に根ざした人材の支えがうかがえます。

(2)ケア・インフラ エリア(福井、鳥取、島根、徳島、長崎、宮崎、鹿児島)
働き方や幸福度の指標では「健康」(16位)、「はたらく幸福」(10位)、「女性活躍」(12位)、「シニア活躍」(13位)が比較的高い一方で、「外国人活躍」(31位)、「労働力充足」(32位)といった外部人材の受け入れに関する指標は低くなっています。

(3)自然・文化共生 エリア(北海道、奈良、和歌山、岡山、山口、愛媛、大分、佐賀、熊本)
「はたらく健康」(9位)は高水準であるものの、「柔軟性」(36位)、「外国人活躍」(29位)、「女性活躍」(29位)など、多様性や制度面での柔軟性は低くなっており、新しい働き方や価値観の受容には慎重な傾向がうかがえます。

(4)地場産業 エリア(宮城、山形、新潟、富山、石川、香川)
「女性活躍」(18位)が比較的高く、共働き文化が根付いている一方、「はたらく幸福」(32位)、「健康」(38位)」といったウェルビーイング指標は低く、「人材マッチング」(33位)や「生産性」(28位)も低いことから、家族内労働に依存した構造が見られます。

(5)工業心臓部 エリア(茨城、栃木、群馬、山梨、静岡、長野、岐阜、愛知、三重、広島)
「生産性」(19位)や「外国人活躍」(13位)、「シニア活躍」(13位)といった人材活用は進んでいるものの、「女性活躍」(37位)が目立って低くなっており、ジェンダー視点の更新が遅れています。

(6)中核都市 エリア(埼玉、千葉、神奈川、滋賀、京都、大阪、兵庫、福岡)
「労働力充足」(6位)、「生産性」(8位)、「人材マッチング」(12位)など労働市場に関する指標や「柔軟性」(7位)は全国でも上位を占める一方、「はたらく健康」(31位)は著しく低く、高い生産性と労働集中の裏側で、個人のウェルビーイングが損なわれています。

(7)首都「東京」 エリア(東京)
高パフォーマンスの労働市場を誇る一方、「はたらく幸福」(29位)、「シニア活躍」(28位)は低く、成果やスピードが重視される環境下で多様な価値観やライフステージへの対応力が問われています。

(8)南国「沖縄」 エリア(沖縄)
「はたらく幸福」(2位)や「健康」(2位)はトップクラスである一方、「シニア活躍」(37位)が低く、高齢世代や多様な層にとっては恩恵が限定されています。

なお、各指標には改善の方向性と具体的な対応策も整理されており、たとえば、「女性活躍」を推進するには、仕事と育児の両立支援や再就職支援強化が求められます。また、「シニア活躍」を推進するには多様な働き方の提供、「生産性」の改善には、DX推進や人材育成・学習基盤の整備などが挙げられています。

これらの調査結果を踏まえて同研究所は、「人口減少と高齢化が加速する日本社会において、地方の活性化は喫緊の課題である。地域ごとの指標の強み・弱みに応じて、どの対策を重点的に進めるかが重要」とコメントしています。

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【出典】
▽パーソル総合研究所