日本各地への出張を頻繁にしている会社員のAさんは、出張先で観光することを趣味としています。そのため、いつも移動時には大きなスーツケースを持って歩いていました。この日も地方への出張をしつつ、週末は地元の観光地を楽しむ予定です。
しかしいざ新幹線に乗ると、困ったことにスーツケースを置く場所がありませんでした。普段は特大荷物スペースを予約しているのですが、今日はすでにスペースが予約されていたため、使うことができません。Aさんは仕方なく座席の足元にスーツケースを入れて座りますが、窓際に座る別の乗客からは明らかに迷惑そうな顔をされる始末です。
このように新幹線でスーツケースを置くスペースを予約できなかった時は、どのように対応したらいいのでしょうか。鉄道ジャーナリストの梅原淳さんに話を聞きました。
■新幹線などでは荷物があるのはお互い様
ーそもそもスーツケースを新幹線に持ち込むうえでのルールはあるのでしょうか?
JR各社が定める「特大荷物ルール」は以下の通りです。
・サイズ制限
新幹線に持ち込める荷物は、サイズによって扱いが変わります。3辺の合計が160cm以内なら自由に持込可能。160~250cmは「特大荷物」として予約が必要で、250cmを超える荷物は持ち込めません。
・予約と手数料
特大荷物を持ち込む場合は「特大荷物スペース付き座席」を予約する必要があります。予約を怠ると、車内で1,000円(税込)の持込手数料が発生します。さらに、東海道・山陽・九州新幹線では予約必須なのに対し、東北・上越・北陸などは予約不要の置き場があるなど、路線ごとの違いも覚えておきたいポイントです。
・置き場所の制限
大きな荷物を通路やデッキに置くのは、安全上の理由から禁止されています。2025年3月には秋田駅で置き去りの荷物が不審物と誤解され、新幹線が一時停止するトラブルも発生しました。
ー特大荷物席を予約していても「置き場が足りない」「他の人に使われていた」などのケースはありますか?
「特大荷物スペース付き座席」の特大荷物スペースを予約したのに他の人の荷物が置かれていたとか、荷物が多すぎて結局通路にあふれるというケースはよく聞きます。これらは車掌などの乗務員に相談すれば対処してもらえます。
国内の旅行客でよく見られるのは、通路側の席を利用している人がキャリーバッグを自分の前に置くことで、窓側の人が出入りしづらいという状況です。たいていは荷棚に乗せる手間を惜しんでいるので、わざわざ乗務員を呼ぶほどではなく、これは何とかしてほしいところです。
ー荷物が多い旅行者に向けて、実践できる工夫や心がけを教えてください。
新幹線などでは荷物があるのはお互い様なので、置く場所以外はそう気を遣う必要はないと思いますし、皆さんのマナーもそう悪いとは思いません。宅配便を利用されるのであれば、当日配送サービスとしてヤマト運輸の「てぶらサービス」がありますし、わざわざ営業所に行かなくてもJR東日本、JR西日本が始めた「マルチエキューブ」のうちホテル即日配送サービスを利用すれば、駅のコインロッカーに荷物を入れるとホテルまで当日中に届けることもできます。
ー新幹線の荷物対応は、今後どのように改善・進化していくと考えられますか?
まずは荷棚の拡充が検討されると思います。それから、荷物スペースも今後はさらに増えるでしょう。現在の荷物スペースは既存の喫煙スペースや洗面所の跡地につくられていますが、今後は専用に設計されてより使いやすくなると思います。
それから、「マルチエキューブ」のうちホテル即日配送サービスがさらに便利になり、列車の車内で荷物を預かって、ホテルまで配送してもらえるようになるかもしれません。さらには、JR東日本は東北新幹線などで「はこビュンサービス」という小荷物輸送サービスを始めたなか、旅行者の手荷物を新幹線で運ぶサービスを始めるかもしれません。
◆梅原淳(うめはら・じゅん)
鉄道ジャーナリスト。書籍の執筆や雑誌への寄稿を中心に、講義・講演やマスメディアでのコメントなどもおこなう。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)