小学3年生の子どもを育てる専業主婦のAさん(30代)は、子どもの習い事について悩んでいました。というのも、Aさん自身が子どもの頃、さまざまな習い事をしていたため、子どもにも同様の経験をさせてあげたいと考えていたからです。
そのため子どもには、プール、ピアノ、英語、習字、ダンスを習わせています。しかしある日、ママ友であるBさんと習い事の話をしていると、「え!そんなにいっぱい習ってるの?!」と驚かれました。子どもも楽しそうに通っており、いろいろやっておいたほうが将来の選択肢を広げられると思うのですが、習わせすぎも良くないのでしょうか。
オリンピック選手へのメンタル指導や子ども・保護者への教育講演などをおこなっている川谷潤太さんに話を聞きました。
■数よりも子どもに合わせて選択することが大切
ー習い事は絞ったほうが効率的に身に付けられるのでしょうか?
Aさんのように、複数の習い事を掛け持ちするケースは増えています。効率を求めるなら1つに絞るのもいいですが、どちらが「正解」というわけではありません。大切なのは、お子さんの興味やペースに合わせた柔軟な選択です。
好奇心がいっぱいの小学生の頃は、いろいろなことを試すのが自信につながります。お子さんと一緒に「今、何が一番ワクワクする?」かを話し合って、1つに絞るか掛け持ちするかを決めてみるのがおすすめです。
ー習い事を複数掛け持ちすることによって子どもにどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
◇メリット
掛け持ちの良い面として、色々な経験をすると、お子さんの世界が広がりやすくなり、いろんな考え方ができるようになります。習い事を通じていろんなスキルが身につき、「自分は色々なことができる」と自信がつきます。
複数の習い事を通じて友達が増えたり、新しい発見をしたり、別の習い事にも活かして自信をつけていく子どもたちもこれまでにたくさん見てきました。
◇デメリット
予定がいっぱいになると、疲れが出てしまい、どの習い事も中途半端になってしまうことがあります。宿題が追いつかない、家族の時間が減ってしまうなどがストレスになって、好きで始めたはずの習い事が、楽しく感じられなくなってしまうことがあります。
学校や習い事のペースなども気にかけながら、毎日のコミュニケーションの中でお子さんの声に耳を傾けて、早めに疲れや心配のサインに気づけるように心がけてあげてください。
ー親はどんなサポートができるでしょうか?
お子さんが掛け持ちを楽しめるよう、日常シーンに即した具体的なサポートの工夫を3つご紹介します。
①スケジュールを見える化
習い事ごとに色分けしてカレンダーに書き込んだり、学校の予定(行事やテストなど)も入れて、予定を目に見える形にすると、お子さんが自分で管理しやすくなります。
先に楽しみがあると頑張れるので、「この日はお休みにしようね」「お出かけしようね」というように、事前に習い事以外の楽しみの日を決めるのもおすすめです。週末にお出かけの予定があるときは、「この日までに宿題をやろうか」など、見通しを立ててあげるのも有効です。
②達成の共有タイム
送迎や夕食の際に「今日の習い事での出来事」を1つ聞いて、頑張りを認めてあげる、できるようになった嬉しい気持ちに共感するなど、習い事での小さな成長を家族で分かち合うと、やる気が長続きします。
他にも、習い事での「できた」をノートやメモに残しておいて、昔の自分からどれだけできることが増えたかを時々見直して、成長を感じて、やる気を上げるという方法もあります。
③気持ちに寄り添う
「疲れた」「宿題が追いつかない」の言葉の裏にある気持ちを聞いてあげるのも大切です。「一時的に忙しかった?」「他にやりたいことができた?」「何か習い事で嫌なことがあった?」など、寄り添って聞いてあげることで子どもは安心して習い事に集中できます。お子さんとの毎日の会話の中で、気持ちに寄り添ってあげてください。
また、「習い事ができるようになったら、どんなことがしたい?」など、成長した未来の自分を想像してワクワクする時間を作ってあげるのもおすすめです。
「これでいいのかな」と親が不安になることもありますが、お子さんの好奇心や気持ちを尊重しつつ、柔軟に調整していく姿勢が、何よりお子さんの成長を支えます。そして、そんな親の思いやりが、子どもに伝わっています。一緒に、楽しく前向きな子育てを続けていきましょう。皆さんの毎日に、少しのヒントになれば幸いです。
◆川谷 潤太(かわたに・じゅんた)株式会社脳レボ 代表取締役社長
大手学習塾で当時史上最年少の校長に就任。その後、高校教員として甲子園出場や日本一の部活動を育成。現在は株式会社脳レボ代表として、脳科学に基づくメンタル指導や教育支援をおこない、オリンピック選手やプロ野球選手などのアスリートやスポーツチームへのメンタル指導、子ども・保護者・教員向けの教育講演、企業の人材育成マネジメントや研修などを開催。これまでに講演は全国で1500回以上、受講者は12万人超。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)

























