育児とは、最初は誰でも不安を抱えるものです。テレ東で働きながら漫画家として活動している真船佳奈さんの『ベビーカーで外に出るの、怖ぇえええー!!!』は、作者・真船さんが自身の子供を連れて外出する際に周りの目を気にしてしまう様子を描いた一作で、X(旧Twitter)にポストされると、6800以上の「いいね」が寄せられました。
■SNSで炎上しやすいのは「育児の話題」
リアルのママ友に馴染めずにいながらも、SNSを唯一の拠り所にしていた真船さん。SNSは育児ハックや誰にも言えない本音が覗ける一方で、育児の話題が炎上しやすいという一面があります。
真船さんは“気軽に育児について投稿してしまう気持ち”を理解しつつ、子供に良くない言葉を目にすると、つい「それは許せん!!」と熱くなって“育児斬り”をしようとすることもありました。
また真船さんは、育児に関する投稿の炎上は「一生懸命に子育てをしているマトモなママ垢」によるものと分析します。さらに、他のママ垢から正しい知識を善意で伝えても、受け入れてもらえないと怒りに変化するパターンもあるそうです。
しかし、もっとも厄介なのは「子連れをよく思わない人たち」です。例えばSNS上で「隣の席がガキになったら最悪」などの投稿があり、さらに「いいね」が万を超えることもあります。真船さんは、想像以上に子連れに対して嫌な印象を抱く人が多いことに驚きました。
その後、「ベビーカーで我が物顔にしてる親 ホント無理」といった電車関連の投稿ばかりチェックしてしまった真船さんは、「もう一生おうちにいる」と外出を諦めてしまいます。
SNSの多くの人の反応に恐怖する真船さんに対して夫は「(こわい人たちは)一部でしょ」と伝えるも、「大切な子供が私のふるまいのせいで敵意を向けられるのはこわいんだよ」と真船さんは心の中で思います。そして真船さんは子供を守るために「ちゃんとした親」でいることを決意するのでした。
読者から「周りの目が気になって何もできないのはよく分かる」などの声があがっています。そこで、同作を描いたきっかけについて、作者の真船佳奈さんに話を聞きました。
■「子供と二人で自由に外出できるようになると大変な緊張感を感じ…」
-育児エッセイ漫画を描き始めたきっかけを教えてください。
漫画家になって7年間、皆さんがスマホ写真を撮ってアップする様な感覚で身の回りの出来事を漫画にして発信しています。
昨今の身の回りの大きな出来事といえば出産・子育てが始まったことなので、息子を妊娠してからの4年弱、についての漫画を描くようになりました。私が出産したのはコロナ禍で、誰にも会えない中出産をしたこともあり、「ほかのお母さんたちと漫画を通して交流したい」と思ったのも大きなきっかけの一つです。
今回の本は、「子育てして初めて知ったこと」「なかなか世の中には発信しづらい育児のリアル」を子育て中のお母さんと分かち合いたいという気持ちと、後述しますが、子供を持たない人にも育児のリアルを知ってほしいという気持ちで書いています。
-同作を描いた経緯も教えてください。
自身の体験からこのお話を書きました。新生児期、二人っきりで家で育児をするそれはそれで悩みがあったのですが、いざ子供と二人で自由に外出できるようになると大変な緊張感…。
いままで身一つで自由に街を闊歩していた時とは世界がガラッと変わり、「いつ泣くかわからない爆弾を抱えているような緊張感」「レベル0の赤子と経験値0の母、という臓器丸出しのような無防備で怖い人に絡まれたり怒られたらどうしようという恐怖」「きちんとした母として見られないと怒られるのでは…という恐怖」など母になるまでは全く想像もできなかった緊張感を味わうようになりました。同じような思いをしているお母さんに届け…!という気持ちで本作を描きました。
-同作を投稿されて様々な反響があったかと思いますが、特に印象に残っているコメントがあれば教えてください。
同じように子育てで悩んだお母さんたちからは「わかる~」という共感のコメントをたくさんいただきましたが、 「子連れの外出ってこんな感じなんだね」と、子育て中ではない方からの感想をいただくのもとてもうれしいです。
子育てって、経験した人にしかわからないという境地が少なからずあり、私自身も子育てをしてはじめて知ったことがたくさんありました。子供を持たない選択肢も普通に存在するようになった令和、それどころか子供がどんどん「希少種」になっていく中で 「子育てしてる人ってこんなこと考えてるんだな」とか、 「子供の泣き声って、親でも100%制御できるわけじゃないんだな」とか子育て中でない方に知っていただけるだけでも、すごく息がしやすくなります。なので、「初めて知った」というようなコメントはとてもうれしかったです!
-読者にメッセージを。
いつも漫画を読んでくださり、ありがとうございます!なんだかまじめなインタビューになってしまいましたが、基本的にギャグもりもりの漫画なので、ぜひ肩の力を抜いて読んでくださったらうれしいです!
(海川 まこと/漫画収集家)
























