45歳の専業主婦・Aさんは、長年続いた夫婦関係に終止符を打とうとしています。しかし頭から離れないのは、「子どもふたりを抱えて、本当に生活していけるのか」という不安でした。長男は小学6年生、次男は小学3年生でこれからお金がかかる時期を迎えます。
貯金はわずかで、すぐにパートを始めたとしても、最初の収入は数万円程度の見込みです。家賃や光熱費、食費を払えば、手元にはほとんど残らない現実を目の当たりにし、ため息をつきました。そんなAさんが注目しているのが、シングルマザーを対象にした公的な手当や支援制度です。
児童扶養手当や児童手当など、条件を満たせば毎月の生活を支えてくれる制度は少なくありません。では、実際にどれくらいの金額の支援を貰えるのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの橋本ひとみさんに話を聞きました。
■手当だけで生活できる? 現実的な受給額と家計の目安
ーシングルマザーが受けられる主な手当には、どのようなものがありますか。
主に2つの手当を受けることができます。
まず中心となるのは「児童扶養手当」、いわゆる母子手当です。離婚・死別・未婚など、ひとり親である世帯が対象で、子どもの人数や所得に応じて支給額が決まります。もう一つは、現在も受け取っておられると思いますが、「児童手当」です。これはすべての子育て世帯に支給される制度のため、引き続き受給できます。
継続的に受け取れる支援としては以上になりますが、自治体によって独自の支援制度もあります。たとえば、東京都では独自に児童育成手当として、子どもひとりにつき月1万3500円を支給しています。
そのほかの国の制度として、就職や資格取得を目指す人を支援する「自立支援教育訓練給付金」「高等職業訓練促進給付金」があります。
たとえば、医療事務や介護職などの資格を取るために勉強する場合、受講料の一部が支給されるほか、勉強中は生活費(最大10万円)の補助も受けられます。仕事と子育てを両立するための“再出発の支え”として活用できるでしょう。
ーこうした手当だけで生活は成り立つのでしょうか。
手当だけでは厳しいです。児童扶養手当の2025年度の支給額は、子どもひとりあたり最大4万6690円です。ふたり目以降には月1万1030円ずつが加算されるため、子どもふたりの場合の支給総額は最大5万7720円となります(所得に応じて減額あり)。
ここに児童手当が加わるのですが、3歳~高校生年代までがひとりあたり月1万円のため、ふたりで月2万円です。これらの手当をすべて合わせても、支給額は最大で月8万円前後にとどまります。
総務省の統計によると、ふたり以上の世帯の消費支出は、1世帯あたり月約31万円です。そのため、手当だけで生活を維持するのは難しく、実際には就労収入を組み合わせて家計を支えるケースが一般的です。
ー離婚前に準備しておくべきことはありますか。
「生活費の2~3か月分の貯金」と「仕事を見つける準備」が重要です。現在は専業主婦であっても、結婚前の職歴や資格があれば、再就職につながりやすいでしょう。離婚を決断する前に、支援制度の内容や就労の選択肢を整理し、将来の生活設計を立てておくことが、安心につながります。
シングルマザーの生活は、手当や支援制度を上手に活用しながら、就労・家計管理・地域サポートを組み合わせることで安定しやすくなります。制度は複雑に見えても、相談先を見つければ必ず解決の糸口となるでしょう。早めに市区町村の窓口や専門家へ相談してみてください。
◆橋本ひとみ(はしもと・ひとみ)
銀行勤務12年を経て、現在は複数企業の経理代行をおこなう。法人営業や富裕層向け資産運用コンサルティングの経験に加え、ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士の資格を持つ。
(まいどなニュース特約・八幡 康二)
























