新年や願い事があるときなど、神社にお参りする方は多いでしょう。安彦晴さんの作品『狛犬送り』では、可愛らしい狛犬たちに囲まれる『モフモフパラダイス』が描かれています。同作はX(旧Twitter)に投稿されると、約3.1万ものいいねが付き注目を集めました。
主人公・庄司は出先で神社を見つけると、できるだけ参拝しています。近年はお参りの際に住所、名前、感謝の気持ちを伝えたあと、「妻を事故や災害から守るよう狛犬を送ってください」と願っていました。
その後「狛犬が妻の周りで遊んでいる」と想像するのが庄司の楽しみでしたが、実は彼には本当に『狛犬を自在に送り出す能力』があったのです。庄司には能力の自覚がなく、妻も狛犬が見えていないため、いつの間にか自宅は狛犬だらけになっていました。
狛犬たちは数の多さを逆手に取り、妻とその周囲のトラブル回避に努めています。
そんなある日の夕飯時、妻は見えていないはずの狛犬たちに突然食事を渡しはじめました。この行動を不思議に思った庄司が、妻に「その小鉢は何なんだい?」と聞くと、妻は「あのね、私の周りに、狛犬さんが沢山居るんだって。」と語りはじめます。
彼女の話では、きっかけは昨日のお昼のこと。小学校の調理員として働く妻は、配膳エレベーターで給食を運んでいました。
すると突然、男子児童が給食ワゴンごと倒れかけたのです。妻は無意識に狛犬をワゴンに送ったことで、男子児童と給食は無事でした。この一部始終を見ていた女子児童から「狛犬がたくさん憑いているのね」と言われたことで、妻は狛犬の存在を知ったのです。
この話を聞いた庄司は、妻に狛犬を送るよう願っていたことを打ち明け、夫婦ともに笑顔に満ち溢れるのでした。
同作に対し、SNS上では「可愛くてほっこりする」「うちにも来て欲しい!」など心温まる声が寄せられています。そこで作者の安彦晴さんに話を聞きました。
■作品は「担当編集者がいつもする願い事」がキッカケ
-なぜ沢山の狛犬たちに囲まれる作品を作ろうとお考えになったのでしょうか。
当時、スペリオールの担当編集さんとの打ち合わせ中の雑談で、「神社に行って手を合わせた時、妻に狛犬を送る妄想をする」という行為を担当編集さん(男性)が実際に神社に行った時にやっているとお聞きしていました。
その後急ぎで読切の制作をすることになり、物語を考える際にエピソードを参考にお話を広げさせて頂きました。送った狛犬で部屋がいっぱいになっていたらいいな、犬に負担がない「超多頭飼い」状態って幸せそうだ…。というアイデアから、いろんな犬種の狛犬達に囲まれる作品にしました。
-安彦さん自身は神社でどのようなことをお参りされていますか?
神社には毎年の初詣くらいでしか参拝せず、普段はなかなかお参りできておりません…。
そのためお参りの際には「今年どうなっていたいか」などの目標を神様に伝え、「頑張りますので運の方をよろしくお願い致します。」と願っていることが多いです。
『狛犬送り』制作の際に正しい神社参拝の仕方を調べて、「最初に自分の名前と住所、神様への日頃の感謝を伝えた方が良い」ということを初めて知りました。
以降はお参りの際にそれらも頭の中で伝えるようにしています。
-最後に何かメッセージなどはありますか。
この度は読切『狛犬送り』を読んで頂きありがとうございます。たくさんの人に読んで頂き、本当に嬉しく思います。
読切・連載共にいつも読者様のご感想が励みになっております。今後も頑張って参ります。
現在小学館スペリオールにて連載中の『光って!月魄さん』単行本第1集、既刊『ザ・シンデレラボーイズ』発売中です。読切『狛犬送り』を楽しんで頂いた方にも是非ご一読頂けますと幸いです。
(海川 まこと/漫画収集家)
























